H30 事例1

 A 社は、資本金 2,500 万円、売上約 12 億円のエレクトロニクス・メーカーである。役員 5 名を除く従業員数は約 50 名で、そのほとんどが正規社員である。代表取締役は、1970 年代後半に同社を立ち上げた A 社長である。現在の A 社は電子機器開発に特化し、基本的に生産を他社に委託し、販売も信頼できる複数のパートナー企業 に委託している、研究開発中心の企業である。この 10 年間は売上のおよそ6割を、 複写機の再生品や複合機内部の部品、複写機用トナーなどの消耗品が占めている。そして、残りの 4 割を、同社が受託し独自で開発している食用肉のトレーサビリティー 装置、業務用 LED照明、追尾型太陽光発電システムなど、電子機器の部品から完成品に至る多様で幅広い製品が占めている。

 大手コンデンサーメーカーの技術者として経験を積んだ後、農業を主産業とする故郷に戻った A 社長は、近隣に進出していた国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカー A 社を創業した。

その後、同社のコアテクノロジーであるセンサー技術が評価されるようになると、主力取引先以外の大手・中堅メーカーとの共同プロジェ クトへの参画が増えたこともあって、気象衛星画像データの受信機や、カメラ一体型 のイメージセンサーやコントローラーなど高精度の製品開発にも取り組むことになっ た。もっとも、当時は売上の 8 割近くを主力取引先向け電子機器製造に依存していた。

 しかし、順調に拡大してきた国内大手電子メーカーの特注電子機器事業が、1990 年代初頭のバブル経済の崩壊によって急激な事業縮小を迫られると、A 社の売上も大幅に落ち込んだ。経営を足元から揺るがされることになった A 社は、農産物や加工食品などの検品装置や、発電効率を高める太陽光発電システムなど、自社技術を応用した様々な新製品開発にチャレンジせざるを得ない状況に追い込まれた。

 平成不況が長引く中で、A 社は存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発し、事業を継続してきた。もちろん開発した製品すべてが市場で 受け入れられるわけもなく、継続的に安定した収入源として A 社の事業の柱となる製品を生み出すこともかなわなかった。そうした危機的状況が、A 社長の製品開発 に対する考え方を一変させることになる。開発した製品を販売した時点で取引が完了する売切り型の事業の限界を打ち破ることを目標にして、新規事業開発に取り組んだのである。それが、複写機関連製品事業である。

 大口顧客は事務機器を販売していたフランチャイズ・チェーンであり、2000 年代 後半のリーマン・ショックに至る回復基調の景気を追い風にして A 社の業績も伸長した。ところが、リーマン・ショックによって急速に市場が縮小し始めると、A 社の売上も頭打ちになった。同業者の多くがこの市場から撤退する中で、A 社はシェアこそ拡大させたが、もはや、その後の売上の拡大を期待することのできる状況ではなかった。

 ところが、A 社がこの事業に参入した頃から、情報通信技術の急速な進歩に伴っ て、事務機器市場が大きく変化してきた。そのことを予測していたからこそ、A 社長は、後進に事業を委ねる条件が整うまで自らが先頭に立って、新規事業や製品の開発にチャレンジし続けているのである。

 これまで幾度かの浮き沈みを経験してきた同社であるが、営業職や事務職、人事・ 経理・総務などの管理業務を兼務している者を加えた約 50 名の社員のうち、技術者 9 割近くを占めている。創業以来変わることなく社員の大半は技術者であるが、売上が数十倍になった今日に至っても従業員数は倍増程度にとどまっている。

 従前 A 社では、電子回路技術部門、精密機械技術部門、ソフトウェア技術部門と専門知識別に部門化されていた。しかし、複写機関連製品事業が先細り傾向になった頃から、製品開発部門、品質管理部門、生産技術部門に編成替えをし、各部門を統括する部門長を役員が兼任した。製品開発部門は、環境エネルギー事業の開発を推進するグループ、法人顧客向けの精密機械を開発するグループ、LED 照明関連製品を開 発するグループに分けられ、電子回路技術、精密機械技術、ソフトウェア技術などの専門知識を有する技術者をほぼ同数配置した混成チームとした。品質管理部門と生産技術部門には、数名の技術者が配属され、製品開発部門の業務をサポートすると同時 に、複数の生産委託先との調整業務を担っている。

 絶えず新しい技術を取り込みながら製品領域の拡大を志向してきた A 社にとって、 人材は重要な経営資源であり、それを支えているのが同社の人事制度である。

 その特徴の一つは、戦力である技術者に新卒者を原則採用せず、地元出身の U ターン組や I ターン組の中途採用者だけに絞っていることである。また、賃金は、設立当初から基本的に年功給の割合をできるだけ少なくして、個人業績は年二回の賞与に多く反映させるようにしてきた。近年、いっそう成果部分を重視するようになり、 年収ベースで二倍近くの差が生じることもある。それにもかかわらず、A 社の離職率が地元の同業他社に比べて低いことは、実力主義が A 社の文化として根付いていることの証左である。とはいえ、その一方で家族主義的な面も多くみられる。社員持 株制度や社員全員による海外旅行などの福利厚生施策を充実させているし、1990 代半ばには、技術者による申請特許に基づく装置が売れると、それを表彰して売上の 1 %を報奨金として技術者が受け取ることができる制度を整備し運用している。

 このように、A 社は、研究開発型企業として、取引先や顧客などの声を反映させていた受け身の製品開発の時代から、時流を先読みし先進的な事業展開を進める一方 で、伝統的な家族主義的要素をも取り入れて成長を実現している企業だといえる。

1970年代後半(創業期)

・国内大手電子メーカー向けの特注電子機器メーカーとして創業する。

・コアテクノロジーであるセンサー技術が評価され、主要取引先以外の大手・中堅メーカーとの共同プロジェクトへの参画が増加(ただし、8割は主力取引先向け電子機器製造に依存)

1990年代初頭(バブル崩壊)

・国内大手電子メーカーの特注電子機器事業が急速に縮小する(A社の経営が足元から揺るがされる)

・農産物や加工食品などの検品装置、発電効率を高める太陽光発電システムなど、自社技術を応用した様々な新製品開発にチャレンジせざるを得ない状況に追い込まれる。

1990年代(長く続く平成不況)

・存続をかけて、ニッチ市場に向けた製品を試行錯誤を重ねながら開発(①市場で受け入れられる製品とそうでないものがある不安定な状況、②継続的に安定した収入源として柱となる製品も生まれない)

・このような危機的状況が製品開発に対する考え方を一変させる→売り切り型から継続的な取引が見込める複写関連製品事業へ

・情報通信技術の急速な進歩に伴って、爺業機器市場が大きく変化

2000年代(景気回復基調)

・複写機関連事業は、事務機器販売のフランチャイズ・チェーンを大口顧客として好調。業績は伸張する。

2008年(リーマンショック後)

・複写機関連製品は、急速に市場が縮小し、同業者の多くが撤退する。A社はそれによってシェアは拡大したが、売上は頭打ちとなる(その後の売り上げ拡大は期待できない)

・組織改編は、複写関連製品事業が先細り傾向となったこの頃。

現在(この10年)

・売上の6割は、複写機の再生品、複写機内部の部品、複写機用トナーなどの消耗品。

残り4割は、受託し独自で開発している食用肉のトレイサビリティー装置、業務用LED照明、追尾型太陽光発電システム。

・電子機器の部品から 完成品に至る多様で幅広い製品を取り扱う。

H30 問題要求

1 (配点 20 )
研究開発型企業である A 社が、相対的に規模の小さな市場をターゲットとしているのはなぜか。その理由を、競争戦略の視点から 100 字以内で答えよ。

★個々の市場規模が小さいことから、大手企業との直接的な競争を回避しやすく、多様な市場への進出もしやすい。その結果、強みである研究開発力を継続的に強化でき、差別化した商品を生み出しやすいと考えているから。

2 (配点 40 )
A
社の事業展開について、以下は設問に答えよ。

(設問 1 )
A
社は創業以来、最終消費者に向けた製品開発にあまり力点を置いてこなかった。 A 社の人員構成から考えて、その理由を 100 字以内で答えよ。

限られた従業員数で売上を拡大していくために、技術者が大半を占めている人員構成として専門性の高い研究開発力を強化し、そこに価値を見出す事業者向けの製品開発を中心にした事業展開をすべきであると考えてきたから。

(設問 2 )
A
社長は経営危機に直面した時に、それまでとは異なる考え方に立って、複写機関連製品事業に着手した。それ以前に同社が開発してきた製品の事業特性と、複写機関連製品の事業特性には、どのような違いがあるか。100 字以内で答えよ。

それ以前の製品は受け身の製品開発による売り切り型であった。それに対し、複写機関連製品は情報技術の急速な進歩を踏まえた主体的な製品開発が求められ、消耗品の需要などによる顧客との継続的な取引が生じる。

3 (配点 20 )
A
社の組織改編にはどのような目的があったか。100 字以内で答えよ。

製品開発部門を、製品領域別にグループ分けすることで業界知識を蓄積し、各要素技術を有する技術者による 混成チームとして要素技術間のすり合わせを円滑化することで、製品領域のスピーディーな拡大を実現すること。

4 (配点 20 )
A
社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的 インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士と して、100 字以内で助言せよ。

組織管理能力を有した人材を育成して部門長などに配置し、新規事業や製品の開発を従業員主導で行う。また、ここの技術者のグループ間移動を活発化し、多様な業界知識を有した新たな価値を生み出せる人材を養成する。

H29 事例1

A 社は、資本金 1,000 万円、年間売上高約 億円の菓子製造業である。A 社の主 力商品は、地元での認知度が高く、贈答品や土産物として利用される高級菓子であ る。A 社の人員構成は、すべての株式を保有し創業メンバーの社長と専務の名、 そして正規社員 18 名、パートタイマー中心の非正規社員約 70 名をあわせた約 90 である。

A 社は、2000 年の創業以来、毎年数千万円単位の規模で売り上げを伸長さ せてきた。近年では、全国市場に展開することを模索して、創業時から取り扱ってき た種類の主力商品に加えて、新しい菓子の開発に取り組んでいる。同社のビジョン は、売上高 30 億円の中堅菓子メーカーになることである。

 現在、A 社の組織は、製造部門、営業部門、総務部門の部門からなる機能別組 織である。部門長と 名の正規社員が所属する製造部門は、餡 あん づくり、生地づくり、 成型加工、そして生産管理を担当している。また、自社店舗による直接販売は行って いないため、創業以来営業を担当してきた専務をトップに名からなる営業部門は、 県内外の取引先との折衝や販売ルートの開拓のほか、出荷地域別にくくられた取引先 への配送管理と在庫管理が主な業務である。非正規社員 70 名のうち毎日出社するの 30 名程度で、残りの 40 名は交代勤務である。非正規社員の主な仕事は、製造ライ ンの最終工程である箱詰めや包装、倉庫管理などの補助業務である。人事・経理など の業務は、名の正規社員から成る総務部門が社長の下で担当している。

 長期的な景気低迷期の激しい企業間競争の中で順調に売上規模を拡大することがで きたのは、A 社が事業を引き継ぐ以前の X 社時代から、現在の主力商品の認知度が 地元で高かったからである。A 社の前身ともいえる X 社は、70 年近い歴史を誇る菓 子製造販売業の老舗であり、1990 年代後半までは地元の有力企業として知られてい た。創業当初、小さな店構えにすぎなかった X 社は、その後直営店をはじめ様々な 販売ルートを通じて、和・洋の生菓子、和洋折衷焼菓子など 100 品目以上の菓子を扱 うようになり、年間売上高は 10 億円を超えるまでになった。しかしながら、1990 代後半バブル経済崩壊後の長期景気低迷の中で販路拡大・生産力増強のための過剰投 資によって巨額の負債を抱え、事業の継続を断念せざるを得なくなった。それに対し て、当時、県を代表する銘菓として人気を博していた商品が売り場から消えてしまう ことを惜しみ、菓子工業組合に贔屓 ひいき 筋がその復活を嘆願するといった動きもみられ た。さらに、県内外の同業メーカーからその商標権を求める声も相次いだ。

 その商標権を地元の菓子工業組合長が X 社社長から取得していたこともあって、 A 社に譲渡することが短期間で決まった。もちろん、A 社社長が X 社の社員であっ たということは重要な点であった。1970 年代半ばから長年にわたって営業の最前線 でキャリアを積んだ A 社社長は、経営破綻時に営業課長の職にあった。一連の破綻 処理業務で主要取引先を訪れていた折に、販売支援の継続を条件に商品の存続を強く 求められたことで一念発起し、事業の再興に立ち上がったのである。

 企業経営者としての経験がないといった不安を抱えながらも、周囲の後押しを受け A 社社長が過半数を出資し、X 社で共に働いていた仲間名もわずかな手持ち資 金を出資して事業再建の道をスタートさせた。主力商品だけに絞って、商品名を冠に した新会社設立の準備を急ピッチで進めた。資金の不足分については、県の支援で低 利融資で賄った。とはいえ、かつてと同じ品質や食感を出すために必要な機器を購入 するためには多額の資金が必要であり、昔ながらの味を復活させるには、その後数年 の年月がかかっている。餡 あん づくりはもとより、旧式の窯を使用した焼き上げ工程を含 めて菓子づくりのほとんどが、人手による作業であった製造工程を大幅に変更し、自 動化によって効率性を高められるようになったのは、現在の工場が完成する 2005 であった。

 製造設備面の課題こそあったものの、商品アイテムを主力商品だけに限定してスタ ートした A 社は、創業直後から一定水準の売り上げを確保することができただけで なく、年を重ねるにつれ売り上げを伸ばし続け、今日の規模にまで成長したのであ る。2000 年代半ばには増資して、手狭になった工場を、そこから離れた郊外の、主 に地元の企業を誘致対象とした工業団地に移転させた。また、その新工場は、食品製 造の国際標準規格である HACCPBハサップCに準拠するとともに、銘菓といわれたか つての商品に勝るとも劣らない品質や食感を確保し、現在の種類のラインアップの 焼菓子を日産 50,000 個体制にまで整備した。

しかし、創業からおよそ 17 年の時を過ぎたとはいえ A 社の主力商品は、前身であ X 社が築きあげてきた主力商品に依存しており、A 社が独自で創りあげたもので はないことは事実である。かねてより目標として掲げてきた全国市場への進出の要件 ともいうべき首都圏出店の夢もいまだにかなっているわけではない。売上高 30 億円 というビジョンを達成するためには、全国の市場で戦うことのできる新商品の開発が不可避であるし、それを実現していくための人材の確保や育成も不可欠である。 17 年の時を経て、共に苦労を乗り越えてきた戦 の多くが定年退職した A 社は、 正に「第三の創業期」に直面しようとしているのである。

H29 設問要求

1問 配点 20 C

景気低迷の中で、一度市場から消えた主力商品を A 社が再び人気商品にさせた最大の要因は、どのような点にあると考えられるか。100 字以内で答えよ。

★地元において高い認知性を有した商標を冠した社名ととした上で、昔ながらの味を追い求めつつ、主力商品だけに絞った商品展開とした。これにより、ブランドイメージを明確化し、消費者に対する浸透力を向上させたこと。

2問 B配点 20 C

A 社の正規社員数は、事業規模が同じ同業他社と比して少人数である。少人数の正規社員での運営を可能にしている A 社の経営体制には、どのような特徴があるのか。100 字以内で答えよ。

★製造工程を自動化していることや自社店舗を有していないことなどにより、社内業務が非正規社員でも担いやすい補助業務などの比率が高く、業務調整の量も少ない。そのため、少人数の管理者による組織管理が可能である。

3B配点 20 C

A 社が工業団地に移転し操業したことによって、どのような戦略的メリットを生 み出したと考えられるか。100 字以内で答えよ。

★広い敷地に工場を構えることで、銘菓としての品質や食感を確保するために必要な機器の導入と、自動化による生産効率の高い生産体制の構築により、商品価値のさらなる向上と需要量の伸長への対応を実現できたこと。

4B配点 20 C

A 社は、全国市場に拡大することでビジョンの達成を模索しているが、それを進めていく上で障害となるリスクの可能性について、中小企業診断士の立場で助言せよ。100 字以内で答えよ。

★商品開発と首都圏出店が要件となるが、競争力のある独自商品が開発できずにいたずらに商品アイテムが拡大すると、ブランドイメージの希釈化や過剰投資による資金不足に直面し、全国市場への展開の継続が困難になる。

5B配点 20 C

「第三の創業期」ともいうべき段階を目前にして、A 社の存続にとって懸念すべき組織的課題を、中小企業診断士として、どのように分析するか。150 字以内で答えよ。

★これまでのA社を支えてきた創業メンバーの多くが退職して組織力が低下する中、従来とは大きく異なる事業展開によって事業規模拡大を図っていくことになる、そのため、組織管理の体制や運営方法の制度

H28 事例②

A 社は、大正時代の半ばに現社長の祖父が創業した、資本金 4,000 万円の地方都 市に本社を置く老舗印刷業者である。戦後まもなく株式会社に改組してから一族で経営を承継し、A 社社長は代目である。現在の A 社の売上はおよそ 15 億円であるが、リーマンショック以降売上は減少傾向で、ここ数年利益もほとんど出ておらず、 赤字経営に近い状態で推移している。A 社社長の目下の経営課題は、売上や利益を確保し、100 年近い同社の歴史を絶やさないことにある。しかし、こうした厳しい経営状況にもかかわらず、およそ 150 人前後で推移してきた従業員B非正規社員 15 人前 後を含むCのリストラを A 社社長自身考えていない。A 社ではこれまでも経営理念の 一つとして掲げてきた「社員は宝」のスローガンの下で、新卒社員や女性社員の採用を 積極的に進め、人件費以外の部分で効率化を図ることに注力してきた。 A 社の売上の 70 %程度を占めているのは、卒業式前後に生徒・学生に配布する学校アルバム事業であり、創業以来の主力製品である。現在、全国およそ 3,000 校のアルバム制作を手掛け、年間の学校アルバム製造部数は 30 万部を超えている。製版から製本までのアルバム制作の全工程を一貫して自社内で行っており、国内シェアもトップクラスである。残りの売上の 30 %を占めているのは、1970 年代から取り組んできた一般印刷事業、1980 年代にスタートさせた美術印刷事業とその他新規事業である。 A 社の業績が悪化し始めたのは、2000 年代になってからのことであり、それ以前、 同社の業績は右肩上がりで推移していた。1990 年代半ばの売上は、現在よりも 10 億円以上も多く、経常利益率も 10 %を超えていた。当時の A 社の成長を支えてきた要因の一つは、今日でも経営理念として引き継がれている人材力の強化、すなわち社員 教育の成果にあったといえる。 1970 年代半ばに代目社長が、他社に先駆けてオフセット印刷機を導入したのを契機にして、独自で技術開発に取り組んで印刷精度を向上させた。それによって学校 アルバム事業を拡大させ、高い印刷精度が求められる美術印刷事業にも参入してい る。また、社員教育に力を注ぎ、企画力やデザイン力を強化・向上させたことで、他 社と差別化を図ることもできるようになった。さらに、教育効果を高めるために、 1980 年代半ばには、自社所有の遊休地に研修施設を建設し、新入社員研修や従業員 の体験学習、小集団活動を積極的に促してきた。   1980 年代後半、将来の少子化時代の到来や OABオフィス・オートメーションC の進展が見込まれるようになると、順調に事業を拡大させてきた A 社でも、学校ア ルバム事業や印刷事業の成長の可能性に懸念を抱くようになり、事業多角化を模索し 始めた。代目社長のリーダーシップの下で、自社企画のカレンダーやメモ帳、レターセットなどの印刷関連のオリジナル製品を開発し、商品見本市などでの販売を開始した。その一方で、自社での社員教育の成功体験や施設を活かすことを目的とした企業研修事業や、工芸教室などの教育関連事業にも参入した。また、当時のCIBコーポ レート・アイデンティティCブームの下で、地元のコンサルティング会社と提携して、 企業イメージのトータルデザインを手掛けるコンサルティング事業や自らの顧客である写真館の店舗デザインを助言するといった事業を手掛けるようになった。さらに、漫画雑誌やタウン誌を編集し発行する出版事業にも手を伸ばした。もっとも、1990 年代後半にあっても売上のおよそ 80 %を学校アルバム事業が占めていることから、業績伸張の要因は、1980 年代後半に立ち上げたそれら事業ではなく、同社が学校アルバム事業を核に蓄積してきた高度な印刷技術を活用した、一般印刷や美術印刷など 印刷事業の拡大にあったことがわかる。2000 年代になると、代目社長が他社に先駆けて進めてきたデジタル化によって、時間やコストの大幅な削減が実現された。 しかし、現社長が就任した 2003 年を前後して、印刷業界の経営環境が大きく変化 した。インターネットが急速に普及し始めて、出版系の需要が大幅に減少した。加え て、印刷のデジタル化によって専門性の高い製版技術が不要になり、他業種から印刷 事業への新規参入が急増するようになった。印刷業界では、新規参入企業との価格競 争が激化し、1998 年以降の約 10 年間で市場規模が兆円以上縮小し、少なからぬ企 業がこの市場からの撤退を余儀なくされた。その厳しい状況の中で、A 社社長は 100 年の歴史を背負うことになったのである。 さらに、2008 年のリーマンショックの余波が、印刷業界を襲った。少子高齢化、 価格競争の激化、景気低迷といった逆風の中で、このままでは生き残ることさえ難し いと感じた A 社社長は、経営改革を決意した。まず着手したのは、多角化した事業 に分散していた経営資源を主力製品であるアルバムに集中し強化することであった。 少子化の中で学校数が減少し学校アルバム市場が縮小するとともに、デジタルカメ ラの普及以来、それまで学校とのパイプ役を果たしていた地域の写真館の数が減少する中で事業規模を維持していくためには、アルバムの新たな市場や需要を開拓することが不可欠となった。そこで、ターゲット市場を学校だけに限るのではなく、美術館 や企業、そして一般消費者のアルバム需要を掘り起こすことに力を入れる体制作りを スタートさせた。少量印刷・高品質印刷が可能な最先端のデジタル印刷機を導入して、得意としてきた美術印刷事業のさらなる強化に加え、定年退職者の記念アルバムや子供の成長記録アルバムの商品化など新規事業を立ち上げた。とはいえ、それら事業を展開するためには、これまでの学校アルバム事業と異なる営業戦略、事業運営体 制が必要となる。生産現場の従業員を営業担当に配置換えするとともに、巨大な潜在市場を抱える大都市圏にも営業所を設けるなどして、営業力強化の体制作りに取り組んだ。 それと同時に、組織改革にも着手した。「営業⇒企画⇒編集⇒印刷⇒製本⇒発送」といった一連の工程を中心に学校アルバム事業に適応するよう編成してきた機能別組織 体制を見直し、アルバム事業、一般印刷事業、美術印刷事業、教育関連事業など、複 数の事業間に横串を刺すことによって、全社が連動し人材の流動性を確保できるような組織に改変した。 いうまでもなく、A 社の経営改革が結実するまでには時を待たなければならないが、労働人口の減少が著しい地方都市にあって 100 年の節目を迎えるためにも、さらなる経営改革の推進とともに、それを実現していく有能な人材の確保が必要であることは確かである。

H28  設問要求

第問B配点 40 C

業績が好調であった A 社の代目社長の時代に進められた事業展開について、以下の設問に答えよ。

B設問C

当初立ち上げた一般印刷事業などの事業展開によって A 社は成長を遂げることができた。

その要因として、どのようなことが考えられるか。100 字以内で述べよ。

B設問C

1990 年代後半になっても売上の大半を学校アルバム事業が占めており、A 社の 代目社長が推し進めた新規事業が大きな成果を上げてきたとはいえない状況であった。

その要因として、どのようなことが考えられるか。100 字以内で述べよ。

第問B配点 40 C

A 社の現社長B代目Cの経営改革に関連して、以下の設問に答えよ。

B設問C

A 社が、新規のアルバム事業を拡大していく際に留意すべき点について、これまでの学校アルバム事業の展開との違いを考慮しながら、中小企業診断士として、 どのような助言をするか。100 字以内で述べよ。

B設問C

A 社では、これまで、学校アルバム事業を中核に据えた機能別組織体制を採用していたが、複数の事業間で全社的に人材の流動性を確保する組織に改変した理由を、100 字以内で述べよ。

第問B配点 20 C

業績低迷が続く A 社が有能な人材を確保していくためには、どういった人事施策 を導入することが有効であると考えられるか。中小企業診断士として、100 字以内で 助言せよ。

H27  事例①

A 社は、1950 年代に創業された、資本金 1,000 万円、売上高 14 億円、従業員数 75 <非正規社員を含む=のプラスチック製品メーカーである。1979 年に設立した、 従業員数 70 <非正規社員を含む=のプラスチック製容器製造を手がける関連会社を 含めると、総売上高は約 36 億円で、グループ全体でみた売上構成比は、プラスチッ ク製容器製造が 60 %、自動車部品製造が 24 %、健康ソリューション事業が 16 %で ある。ここ年でみると、売上構成比はほとんど変わらず、業績もほぼ横ばいで推移 しているが、決して高い利益を上げているとはいえない。 A 社単体でみると、その売上のおよそ 60 %を自動車部品製造が占めているが、創 業当初の主力製品は、プラスチック製のスポーツ用品であった。終戦後 10 年の時を経て、戦後の混乱から日本社会が安定を取り戻し、庶民にも経済的余裕が生まれる中で、レジャーやスポーツへの関心が徐々に高まりつつあった。そうした時代に、いち早く流行の兆しをとらえた創業者が、当時新素材として注目されていたプラスチックを用いたバドミントン用シャトルコックの開発・製造に取り組んだことで、同社は誕 生した。 創業当初こそ、バドミントンはあまり知られていないスポーツであったが、高度経済成長とともに、創業者のもくろみどおりその市場は広がった。その後、同社のコア 技術であったプラスチックの射出成形技術<加熱溶融させた材料を金型内に射出注入 し、冷却・固化させることによって、成形品を得る方法=によるシャトルコックの製 造だけでなく、木製のラケット製造にも業容を拡大すると、台湾にラケット製造の専用工場を建設した。 しかし、1970 年代初めの第一次オイルショックと前後して、台湾製や中国製の廉価なシャトルコックが輸入されるようになると、A 社の売上は激減した。時を同じ くして、木製ラケットが金属フレームに代替されたこともあって、A 社の売上は最盛期の約 70 %減となり、一転して経営危機に直面することになった。どうにか事業 を継続させ、約 40 名の従業員を路頭に迷わせずに済んだのは、当時バドミントン用 品の製造・販売の陰で細々と続けていた、自動車部品の受注生産やレジャー用品の製 造などで採用していたブロー成形技術<ペットボトルなど、中空の製品を作るのに用 いられるプラスチックの加工法=があったからである。そして、その成形技術の高度化が、その後、A 社再生への道を切り開くことになる。

A 社の経営が危機に陥った時期、創業者である父に請われてサラリーマンを辞めて、都市部から離れた生まれ故郷の農村に、A 社社長は戻ることを決意した。瀕死 状態の A 社の事業を託された A 社社長は、ブロー成形技術の高度化に取り組むと同時に、それを活かすことのできる注文を求めて全国を行脚した。苦労の末、楽器メー カーから楽器収納用ケースの製造依頼を取りつけることができた。自社で開発し特許まで取得した新しい成形技術を活かすことができたとはいえ、その新規事業は、技術難度はもちろん、自社ブランドで展開してきたバドミントン事業とは、事業に対する考え方そのものが異なっていた。そこで、再起をかけてこのビジネスをスタートさせたA社社長は、当初社内で行っていた新規事業を、関連会社として独立させること にした。 こうして本格的に稼働した新規事業は、A 社社長の期待以上に急速に伸長し、そ れまで抱えてきた多額の借入金を徐々に返済することができるまでになり、次なる成 長事業を模索する余裕も出てきた。そこで、A 社社長が注目した事業のひとつは、 同社の祖業ともいうべきスポーツ用品事業での事業拡大であった。ターゲットにしたのは、1980 年頃認知度が高まりつつあったゲートボールの市場である。ゲートボール用のボールやスティック、タイマーなどで特許を取得すると、バドミントン関連製品の製造で使用していた工場をゲートボール用品工場に全面的に改装し、自社ブランドでの販売を開始した。少子高齢化社会を目前に控えたわが国でその市場は徐々に伸長し、A 社の製品が市場に出回るようになった。しかし、その後、ゲートボールの 人気に陰りがみられるようになったために、次なるスポーツ用品事業の模索が始まった。 もっとも、その頃になると、自動車部品事業拡大を追い風にして進めてきた成形技術の高度化や工場増築などの投資が功を奏し、バスタブなどの大型成形製品の注文を受けることができる体制も整って、A 社グループの経営は比較的順調であった。ま た、新規事業を模索していたスポーツビジネスでは、シニア層をターゲットにしたグラウンドゴルフ市場に参入し、国内市場シェアの 60 %以上を占めるようになった。 2000 年代半ばになると、地元自治体や大学との連携によって福祉施設向けレクリ エーションゲームや認知症予防のための製品を開発し、福祉事業に参入した。さらに、ゲートボールやグラウンドゴルフなどシニア向け事業で培ってきた知識・経験、そしてそれにかかわるネットワークを活用できることから、スポーツ関連分野の事業全体を健康ソリューション事業と位置づけた。健康ソリューション事業では、シニア層にターゲットを絞ることなく、体力測定診断プログラムなどのソフト開発にも着手 しサービス事業を拡大して、グループ売上全体の 16 %を占めるまでに成長させたの である。 こうして経営危機を乗り越えてきた A 社では、A 社社長が社長を務める関連会社を含めて、従業員のほとんどが正規社員であり、非正規社員は数名に過ぎない。グル ープ全体の事業別従業員構成は、プラスチック製容器製造が 70 名、自動車部品製造 35 名、健康ソリューション事業が 40 名である。近年になってボーナスなどでわず かに業績給的要素を取り入れつつあるが、給与や昇進などの人事制度は、ほぼ年功ベ ースで運用されている。

H27 設問要求

第問<配点 20 =

ゲートボールやグラウンドゴルフなど、A 社を支えてきたスポーツ用品事業の市場には、どのような特性があると考えられるか。100 字以内で述べよ。

第問<配点 20 =

A 社は、当初、新しい分野のプラスチック成形事業を社内で行っていたが、その後、関連会社を設立し移管している。その理由として、どのようなことが考えられるか。120 字以内で述べよ。

第問<配点 20 =

A 社および関連会社を含めた企業グループで、大型成形技術の導入や技術開発などによって、プラスチック製容器製造事業の売上が 60 %を占めるようになった。そのことは、今後の経営に、どのような課題を生み出す可能性があると考えられるか。 中小企業診断士として、100 字以内で述べよ。

第問<配点 20 =

A 社および関連会社を含めた企業グループで、成果主義に基づく賃金制度を、あえて導入していない理由として、どのようなことが考えられるか。100 字以内で述べよ。

第問<配点 20 =

A 社の健康ソリューション事業では、スポーツ関連製品の製造・販売だけではなく、体力測定診断プログラムや認知症予防ツールなどのサービス事業も手がけている。そうしたサービス事業をさらに拡大させていくうえで、どのような点に留意して組織文化の変革や人材育成を進めていくべきか。中小企業診断士として、100 字以内で助言せよ。

H26 事例①

A 社は、資本金 2,000 万円、売上高約 3 5 千万円、従業員数 40 ;正規社員 25 名、非正規社員 15 名の精密ガラス加工メーカーである。1970 年代半ばの創業から今日に至るまで、A 社社長が代表取締役として陣頭指揮をとっている。現在、A 社の取り扱っている主力製品は、試薬検査などに使用する理化学分析用試験管、医療機 関などで使用されているレーザー装置、光ファイバーなどに用いるガラス管などである。売上のおよそ半分を OEM 生産の理化学分析用試験管事業が占め、あとの半分を レーザー装置事業とガラス管事業でそれぞれ同程度を売り上げている。 現在、A 社の組織は、生産、研究開発を中心にした機能別組織である。営業担当者は 1 名で、取引先との窓口業務にあたっている。研究開発部門には、研究室と開発 室に計 6 名の社員が所属しており、工学博士号をもつ社員もいる。研究開発部門は、新製品開発や新技術開発のほか、製造装置の開発、レーザー装置の開発・販売を担当している。生産部門は、製造第 1 課、第 2 課、品質管理課の 3 つの課で構成されている。第 1 課は主に試験管製造を、第 2 課がガラス管など試験管以外の精密ガラス加工 製品の製造を担当し、近年昇進した中途採用者がそれぞれの課の課長を務めている。 そして、人事・経理などを総務部が担当している。 A 社が開発・製造している製品に関連する精密ガラス加工技術とは、われわれが 通常イメージするようなグラスや置物、工芸品を製造する職人的な工芸技術ではなく、絶縁性、透過性、外圧の統制などガラスの持つ特性を最大限活用する高度な加工技術である。かつてテレビに使われていたブラウン管や真空管、放電管なども、精密ガラス加工技術をベースにした関連製品である。 真空成形加工、特殊ランプ加工、ガス加工、延伸加工などの精密ガラス加工技術を活用した A 社が取り扱う製品の開発・製造には、ガラス加工技術の知識や熟練技能だけでなく、物理学や化学に関する専門的な知識も不可欠である。A 社社長が精密ガラス加工に必要な基礎技術や知識を習得し会社を立ち上げることができたのは、高校卒業後に 10 年ほど中堅ガラス加工メーカーに勤務し、そこで大手電機メーカーの 研究所や大学の研究機関との共同開発のプロジェクトに深くかかわってきたからであ る。その時に培った人間関係や研究開発に関する技術や経験が、創業から今日に至るまで、A 社の経営基盤を成している。 精密ガラス加工技術を必要とする製品分野は、技術革新のスピードが速く、製品ライフサイクルが短い。そのため、サプライヤーは、新しい技術や新しい製品を取引先に提案することができなければ取引を継続させていくことは難しい。 小さな工場を借り、サラリーマン時代の人間関係を通じて、大学などの研究機関から頼まれる単発的な仕事をひとりだけでこなす体制でスタートしたA 社も、取引先 の要望を超えるアイデアを提案することによって存続と成長を実現してきたのである。その成長スピードは決して速いとはいえないが、精密ガラス加工技術の関連技術を広げながら、今日の研究開発型企業へと発展を遂げてきた。 創業から10 年余り、依頼に応じて開発・製造した製品の多くは、技術革新や代替品の登場によって 2 3 年で注文がなくなり、なかなか主力製品に育たなかった。 A 社にとって成長に向けた最初のターニング・ポイントは、レーザー用放電管の 開発であった。大学や大手企業の研究機関から依頼を受けて開発・製造に取り組んで きたそれまでの製品とは異なって、A 社社長のアイデアではじめて自社開発に着手したレーザー用放電管事業はひとつの柱となった。その後 10 年の時を経て、レーザー用放電管事業はレーザー装置そのものの製品化にもつながり、売上は大きく伸張することになる。 もうひとつのターニング・ポイントは、レーザー用放電管開発と前後して、現在の 主力製品となる理化学分析用試験管の OEM 生産を化学用分析機器メーカーから依頼されたことであった。もっとも、この事業が A 社の利益に大きく貢献するようになったのは、5 年ほど前からである。というのも、製造依頼があった当初、分析用試験管の市場規模はまだ小さく、生産量も少なかったし、製造プロセスの多くが手作業であったことに加えて外注した製造設備を使っていたために、良品率が 40 %以下と著しく低かったためである。その後、試験管の需要増に伴って受注量も増えて A 社の売上は少しずつ伸張したが、良品率が低く利益増にはなかなか結びつかなかった。試験管市場の成長を確信していた A 社社長は、そうした事態を打破するために製造設備の内製化を決意し、段階的に製造設備の改良・開発に取り組み始めた。着手から 5 年以上の年月がかかったものの製造設備の内製化を進めたことによって、製造プロセ スの自動化を実現するなど量産体制を完成させた結果、良品率は 60 %程度まで改善した。その後、理化学分析用試験管の品質も向上し、よりコンパクトになったにもかかわらず、良品率 60 %前後を維持してきた。ここ数年、さらに高精度の分析が可能な製品へと進化を遂げたこともあって高い製造技術が求められるようになっているが、良品率は 90 %を超えるまでに向上している。 これらのターニング・ポイントを経る中で、A 社社長は、以前にも増して、研究 開発力の強化なくして事業の成長も存続も望めないことを痛感するようになった。それまでも、社内で解決できない技術的な問題や、新製品や新規技術に関連する問題が生じた場合には、顧問を務める関連分野の専門家である大学教授や研究機関の研究者からアドバイスを受けてきた。工学博士号をもった社員を 5 年ほど前から採用し社内に研究室を開設したのも、研究開発力をより強化し、新たな事業分野を開拓するためである。その成果こそいまだ未知数であるが、精密ガラス加工技術を応用した新製品の芽が確実に育ちつつある。さらに、近年、新たに大学院卒の博士号取得見込者を採用し、研究開発力強化に積極的に取り組んでいる。 とはいえ、A 社のような売上も利益も少ない規模の小さな中小企業が研究開発型企業として生き残るためには、必要な研究開発費を捻出することがもうひとつの重要な経営課題である。レーザー用放電管の自主開発に取り組んだ時代の A 社の売上高は 1 億円にも満たず、社員数も 10 名に過ぎなかった。そのような企業規模で新規事業のための多額の研究開発資金を捻出することは難しかった。A 社が現在進めている新規事業の資金は、大部分が公的助成金によって賄われている。研究開発型中小企業にとって、官公庁の助成金の獲得は極めて重要な資金調達の手段なのである。

H26 設問要求

第問;配点 20 <

A 社は、小規模ながら大学や企業の研究機関と共同開発した独創的な技術を武器に事業を展開しようとする研究開発型中小企業である。わが国でも、近年、そうしたタイプの企業が増えつつあるが、その背景には、どのような経営環境の変化があると 考えられるか。120 字以内で答えよ。

3第問;配点 20 <

A 社は、創業期、大学や企業の研究機関の依頼に応じて製品を提供してきた。しかし、当時の製品の多くが A 社の主力製品に育たなかったのは、精密加工技術を用いた取引先の製品自体のライフサイクルが短かったこと以外に、どのような理由が考えられるか。100 字以内で答えよ。

第問;配点 20 <

2 度のターニング・ポイントを経て、A 社は安定的成長を確保することができるようになった。新しい事業の柱ができた結果、A 社にとって組織管理上の新たな課題 が生じた。それは、どのような課題であると考えられるか。100 字以内で答えよ。

第問;配点 20 <

A 社の主力製品である試験管の良品率は、製造設備を内製化した後、60 %まで改善したが、その後しばらく大幅な改善は見られず横ばいで推移した。ところが近年、 良品率が 60 %から 90 %へと大幅に改善している。その要因として、どのようなこと が考えられるか。100 字以内で答えよ。

第問;配点 20 <

A 社は、若干名の博士号取得者や博士号取得見込者を採用している。採用した高度な専門知識をもつ人材を長期的に勤務させていくためには、どのような管理施策をとるべきか。中小企業診断士として 100 字以内で助言せよ。

H30  事例②

B 社は、X 市市街地中心部にある老舗日本旅館である。明治初期に創業し、約 150 年の歴史をもつ。 年前、父親である社長が急死し、民間企業に勤めていた 30 歳代 後半の長男が急きょ事業を承継することになり、 8 代目社長に就任した。資本金は 500 万円、従業員は家族従業員 3 名、パート従業員 名である。このうち 1 名は、つ い最近雇用した英語に堪能な従業員である。客室は全 15 室で、最大収容人員は 50 名、 1 1 泊朝食付き 7,500 円を基本プランとする。裏手には大型バス 1 台、乗用車 6 台分の駐車場がある。 簡素な朝食は提供しているものの、客室稼働率に上下があり食材のロスが発生する という理由と調理人の人件費を削減するという理由から、創業以来、夕食は提供して いない。宿泊客から夕食を館内でとりたいという要望がある場合は、すぐそばにある 地元の割烹料理店からの仕出しで対応している。これまで何度か小さな増改築を行っ てきたが、現在の宿泊棟は築 45 年である。客室には基本的にずっと手を加えていな い。畳と座卓、障子、天井吊り下げ式照明のある、布団を敷くタイプの古風な和室で ある。館内には大広間があり、その窓からは小ぶりだが和の風情がある苔 こけ むした庭園 を眺めることができる。大浴場はないため、各部屋に洋式トイレとバスを設置してい る。歴代の社長たちは皆、芸術や文化への造詣が深く、執筆や創作のために長期滞在 する作家や芸術家を支援してきた。このため、館内の廊下や共用スペースには、歴代 の社長たちが支援してきた芸術家による美術品が随所に配置され、全体として小規模 な施設ながらも文化の香りに満ちた雰囲気である。この中には、海外でも名の知られ た作家や芸術家もいる。 X 市は江戸時代から栄えた城下町である。明治時代までは県内随一の商都であり、 教育や文化支援にも熱心な土地柄であった。X 市市街地は、北側は城跡付近に造ら れた官公庁街、東から南側にかけては名 めい さつ ・古 さつ が点在する地域となっており、西側 には商都の名残である広大な商業地域が広がっている。B 社は創業時からちょうどこ の中央に立地し、これらのエリアはいずれも徒歩圏内にある。B 社から最寄り駅まで は公共バスを利用して 20 分強かかるが、現在、この間を結ぶバスは平均すると 1 間に 本程度運行している。この最寄り駅からは国内線と国際線の離発着がある 空港に向けて、毎日 7 往復の直通バスが走っており、駅から空港までの所要時間は 1 時間 40 分ほどである。 2 X 市市街地の中でも、商業地域の目抜き通りには江戸時代の豪商や明治時代の実 業家が造り上げた厳かな大型建造物が立ち並ぶ。この通りは現在でも商業地域の顔で ある。400 年以上続くとされる地域の祭りでは、市内各地を練り歩いてきた豪勢な何 台もの山車がこの通りに集結するタイミングで最高の盛り上がりを見せる。夜通し続 くこの祭りの見物客は近年、年々増加している。街の一角にはこの祭りの展示施設が あり、ここを訪れた観光客は有料で山車を引く体験ができる。X 市商業地域には、 歴史を感じさせる大型建造物が残る一方、住民を対象にした店舗もたくさんある。普 段遣いのお店から料亭、割烹料理店までのさまざまなタイプの飲食店をはじめ、各種 食料品店、和装店、銭湯、劇場、地元の篤志家が建設した美術館などの施設が集積し ている。 10 年ほど前、X 市の名刹と商業地域が高視聴率の連続ドラマの舞台となり、この エリアが一躍脚光を浴びた。これを機に、商業地域に拠点をもつ経営者層を中心とし て、このエリア一体の街並み整備を進めることになった。名刹は通年で夜間ライト アップを行い、地域の動きに協力した。地域ボランティアは観光案内や街の清掃活動 を行い、美しい街並みと活気の維持に熱心である。こうした影響を受け、最近では、 ほとんどいなかった夜間の滞在人口は増加傾向にある。 X 市は大都市圏とも近く、電車で 時間程度の日帰りできる距離にある。古き良 き時代の日本を感じさせる X 市の街のたたずまいは観光地として人気を集めてい る。2017 年時点で、X 市を訪れる観光客は全体で約 500 万人、このうち約 20 万人が インバウンド客である。商業地域には空き店舗があったが、観光客が回遊しそうな通 り沿いの空き店舗には地元の老舗商店が出店して、シャッター通りにならないための 協力体制を敷いた。食べ歩きできるスイーツや地域の伝統を思わせる和菓子などを販 売し、街のにぎわい創出に努めた。歴史ある街並みに加え、こうした食べ物などは写 真映えし、SNS 投稿に向く。そのため、ここ数年は和の風情を求めるインバウンド 客が急増している(図参照)。 一方、B 社のビジネス手法は創業時からほとんど変わっていなかった。明治時代か ら仕事や執筆・創作活動のために訪れる宿泊客が常に一定数いたため、たいしたプロ モーション活動を行う必要性がなかったのが理由である。それに気付いた 8 代目は就 任して 年後、館内に無料 Wi-Fi を導入し、B 社ホームページも開設した。これによ 3 り、それまで電話のみで受け付けていた宿泊予約も、ホームページから外国語でも受 け付けられるようになった。また、最低限のコミュニケーションが主要な外国語で図 れるよう、従業員教育も始めた。近々モバイル決済の導入も考えている。現在、宿泊 客は昔なじみのビジネス客 割、インバウンド客 割であるが、なじみ客らは高齢化 が進み、減少傾向にある。最寄り駅から距離のある B 社には、事前に予約のない客 が宿泊することはほとんどない。 B 社から距離の離れた駅前にはチェーン系ビジネスホテルが 2 軒ほどあるが、X 市街地中心部には B 社以外に宿泊施設がない。かつては B 社と似たようなタイプの 旅館もあったが、10 年以上前に閉鎖している。B 社周辺にある他の業種の店々は、 拡大する観光需要をバネに、このところ高収益を上げていると聞く。B 社だけがこの 需要を享受できていない状態だ。 8 代目は事業承継したばかりで経営の先行きが不透明であるため、宿泊棟の改築な どの大規模な投資は当面避けたいと考えている。既存客との関係を考えると、宿泊料 金の値上げにも着手したくない。打てる手が限られる中、 8 代目が試しに従来の簡素 な朝食を日本の朝を感じられる献立に切り替え、器にもこだわってみたところ、多く の宿泊客から喜びの声が聞かれた。こうした様子を目にした 8 代目は、経営刷新して 営業を継続したいと考えるようになり、中小企業診断士にその方向性を相談した。 【図】 

H30  問題要求

1 問(配点 25 点) B 社の現状について、 3CCustomer:顧客、Competitor:競合、Company:自社) 分析の観点から 150 字以内で述べよ。 2 問(配点 25 点) B 社は今後、新規宿泊客を増加させたいと考えている。そこで、B 社のホームペー ジや旅行サイトに B 社の建物の外観や館内設備に関する情報を掲載したが、反応が いまひとつであった。B 社はどのような自社情報を新たに掲載することによって、閲 覧者の好意的な反応を獲得できるか。今後のメインターゲット層を明確にして、100 字以内で述べよ。 問(配点 25 点) B 社は、宿泊客のインターネット上での好意的なクチコミをより多く誘発するため に、おもてなしの一環として、従業員と宿泊客との交流を促進したいと考えている。 B 社は、従業員を通じてどのような交流を行うべきか、100 字以内で述べよ。 問(配点 25 点) B 社は、X 市の夜の活気を取り込んで、B 社への宿泊需要を生み出したいと考えて いる。B 社はどのような施策を行うべきか、100 字以内で述べよ。

H29 事例②

B 社は資本金 1,000 万円、社員名、パート名の寝具小売業である。創業以来、 地方都市 X 市の商店街に階と階を合わせて 300 m2 強の売場の店舗を構えてい る。B 社は 1955 年に現社長の父親が創業し、1970 年に現社長とその夫人である副社 長が事業を継承した。品揃えは、布団、ベッド、マットレス、ベビー布団、ベビーベ ッド、介護ベッド、布団カバー、枕、パジャマなどである。B 社は寝具類のボランタ リー・チェーンに加盟し、商品は同本部から仕入れている。B 社のこだわりは接客に ある。睡眠状況を聞きながら商品を薦めるという、現社長が始めた接客は、多くの顧 客の信頼を得ている。また趣味の裁縫、刺 しゅう の技術を生かして、副社長が作った小 物入れやトートバッグなどのノベルティも人気があり、それを目当てに来店する顧客 がいるほどである。 現在の X 市の人口は緩やかな減少傾向にある。そして、年齢分布は図のようにな っている。X 市の主要産業は農業とガラス製品生産である。市内にはガラス製品の 大小工場が林立し、多くの雇用を創出している。2000 年に大規模工場の一部が海外 移転し、市内経済の衰退が見られたが、近年は中小工場の若手経営者の努力により、 市内経済は回復傾向にある。2000 年頃の一時期は若年層の住民が県庁所在地に転居 することが多かった。これに対して X 市役所は若年層の環流を図り、子育てに関す る行政サービスを充実させた。また、ここ数年は建築業も好調である。世帯同居が 減少し、核家族世帯のための建築需要が増えている。加えて、介護のための改装も増 加している。 今日まで商店街の小売店は収益悪化と経営者の高齢化による閉店が続いている。収 益悪化の主要因は 1980 年に出店した幹線道路沿いにある大型スーパーである。しか し、商店街の飲食店の多くは工場関係者による外食、出前需要があり繁盛している。 現在は飲食店を除くと閑散としている商店街も、高度成長期には大変なにぎわいで あった。B 社も日々多くの来店客を集めた。しかし、丁寧な接客のため来店客に待ち 時間が生じるという問題が起きた。そこで、店舗の一角に椅子とテーブルを置き、無 料で飲み物を提供する休憩コーナーを設置した。これにより、接客中であることを見 て来店客が帰ってしまうケースが減り、売り上げは増加した。 2000 年代以降、若年層住民の大半が大型スーパーで買い物をするようになり、B 社の来店客数も大幅に減った。時間を持て余した副社長は、手のあいた飲食店経営者 DKJC-2B 1 DKJC2-B-W.smd Page 3 17/10/11 20:45 v3.40 を集め、休憩コーナーで井戸端会議をし始めた。次第に人の輪が広がり、午前は引退 した小売店経営者、昼過ぎは飲食店の経営者やスタッフ、夕方は工場関係者が集うよ うになった。定休日には一緒にバス旅行や映画に出かけ、交流を深めた。当然、日々 集まる井戸端会議メンバーがそれほど頻繁に寝具を買うわけではないが、寝具の買い 替えがあればほぼ B 社で購入している。また、他の小売店が閉店した 2000 年代以降 に、化粧品、せっけん等のこだわりの日用品販売を引き継いだ。これらが店内にある のを見て、井戸端会議メンバーが購入し、リピートする例も多い。寝具は購買間隔が 長く、顧客との接点が切れやすいが、日用品は購買間隔が短いので、B 社が顧客との 継続的な接点を作りやすくなった。 井戸端会議は B 社が潜在的な顧客ニーズを収集する場でもあった。2010 年のある 日、井戸端会議で「買い物のために県庁所在地の百貨店まで出かけたのに、欲しいも のがなかったときは体力的、精神的につらい」ということが話題になり、多くのメン バーがその意見に賛同した。その頃、B 社には、ボランタリー・チェーン本部から外 出用を主とする婦人服の予約会BCを実施しないか、という打診があった。同チェー ンは近年、加盟店活性化のために、寝具に加えて婦人服、婦人用ハンドバッグ、宝飾 品の仕入および販売を強化していた。開催には登録料を払う必要があり、長年寝具一 筋でやってきた現社長は婦人服が売れるイメージが湧かず、当初は断る予定であっ た。しかし、井戸端会議の話を聞き、打診を受け入れた。期間中は店舗階の売場を 整理し、試着室を設け、臨時イベントスペースとした。ただし、スペースはそれほど 広くないため、日頃の交流を通じて、顧客の好みをよく把握している副社長が品揃え を厳選した。予約会には井戸端会議のメンバーが多数来店し、時間によっては顧客が 会場に入れないほどであった。好評を得た予約会は、継続を望む声があり、開始から 既に数年が経過している現在もシーズンごとの予約会の売り上げは落ちずにいる。現 在の年間売り上げに占める割合はおおよそ寝具 70 %、婦人服 25 %、日用品%とな っている。 予約会が始まった頃、子育てにめどが付いた現社長の娘が店を手伝うようになっ た。既に現社長は 70 歳近くとなり、一時は廃業を検討したが井戸端会議メンバーが 存続を強く希望し、数年内に現社長の娘が次期社長となり、事業を継承することにな った。 DKJC-2B 2 DKJC2-B-W.smd Page 4 17/10/11 20:45 v3.40 次期社長は保育士の勤務経験があり、保育園ごとの昼寝用布団、手作りで用意する 手さげカバンのサイズなどに関するルールを詳しく知っていた。ある日、井戸端会議 メンバーの世代B以下、「シルバー世代」というCの顧客に、孫の入園準備のアドバイス をし、感謝されたことがあった。それをきっかけに、シルバー世代の子供世代B以下、 「子育て世代」というCの顧客が入園準備のアドバイスと商品を求め、来店するように なった。 現在も休憩コーナーに人が集うが、シルバー世代の顧客の多くはやがて介護をされ る側の立場となり、確実に減少する。今後の対応を考えるべく次期社長は、大型スー パーの寝具売場を視察した。視察を通じて、高品質な商品が少ないこと、従業員がほ とんどおらず、十分な説明もできないことが分かった。そこで、次期社長は保育園の 入園準備を通じて知り合った子育て世代向けに「親と子の快眠教室」という月回のイ ベントを開催し、親の快眠と子供を寝かしつける工夫についての教室を開始した。教 室の参加者は、後日顧客として来店するようになりつつある。 B 社にとってシルバー世代に関する店内の顧客台帳や現社長達の頭の中にある情報 は貴重な無形資産である。次期社長はこれらの情報に容易にアクセスすることができ るように情報のデータベース化を実施した。現社長が配達時に記録した住所、副社長 が記録した寝具や婦人服の購買履歴と記憶した好みを、可能な限り文字と画像にし て、簡易型データベースに登録した。データベースはリピーターである重要顧客から なる 100 件強の小規模なものであるが、件の情報は非常に詳細なものとなった。し かし、活用方法は見いだせずにおり、課題となっている。 B 社は、地域とその顧客に支えられて存続してきた。そのため、次期社長は事業継 続のためには、地域の繁栄が必要だと考えている。次期社長は取り組むべき施策につ いて、中小企業診断士に助言を求めることとした。 BC主にアパレル業界で行われるイベント。顧客が会場でサンプルを確認、試着し、 気に入ったものがあれば商品を予約できる。商品の引き渡しと支払いは後日行う。 DKJC-2B 3 DKJC2-B-W.smd Page 5 17/10/11 20:45 v3.40 現在の X 市と全国の年齢別人口構成比B歳~100 歳までC DKJC-2B 4 DKJC2-B-W.smd Page 6 17/10/11 20:45 v3.40

H29 設問要求

第問B配点 20 C B 社について、現在の a 自社の強みと b 競合の状況をそれぞれ 60 字以内で説明せ よ。 第問B配点 25 C B 社はボランタリー・チェーン本部から新たに婦人用ハンドバッグの予約会の開催 を打診された。B 社は現在のデータベースを活用しながら、この予約会を成功させよ うと考えている。そのためには、どのような施策を行うべきか。120 字以内で助言せ よ。 第問B配点 30 C 地域内の中小建築業と連携しながら、シルバー世代の顧客生涯価値を高めるための 施策について、120 字以内で助言せよ。 第問B配点 25 C B 社は今後、シルバー世代以外のどのセグメントをメイン・ターゲットにし、どの ような施策を行うべきか。図を参考に、120 字以内で助言せよ。

H28 事例2

B 社は、X 市郊外にあるしょうゆ及びしょうゆ関連製品のメーカーB以下、「しょう ゆメーカー」という。Cである。資本金は 2,000 万円、従業員Bパート含むC 50 名であ る。創業は 1770 年と古く、現在の社長は 10 代目にあたる。2016 年に社長就任 21 を迎えた。 B 社の本社と工場は隣接しており、すぐそばには Y 川が流れる。江戸時代には、 この川が原材料や完成品のしょうゆの大量輸送に使用されていた。現在、多くの中小 しょうゆメーカーでは、自社の蔵でのしょうゆ仕込みをやめ、しょうゆの原料となる 「生 揚げB火入れ、ろ過していないCしょうゆ」を大手メーカーから仕入れ、これに火入 れや味付けをして自社製品として販売している。しかし、B 社は創業以来一貫して国 産丸大豆を原材料とし、自社の蔵で杉桶を使ったしょうゆ醸造を続けている。 本社から車で 10 分ほど離れた X 市の市街地は、江戸時代から繁栄した商業地であ る。現在は当時の面影をしのばせる伝統的な街並みを生かして、観光地として脚光を 浴びている。懐かしさを求めて女性やシニア層が連日街を訪れ、日本の伝統に興味の あるアジアからの外国人観光客も多い。B 社は、この観光地化したエリアに年前、 自社製品をフルラインアップで販売する直営店を出店した。直営店には、11 代目予 定者B社長の子息、当時 33 Cの発案で、自社製品を麺料理のつゆやだしなどに使用 した飲食店も併設した。この飲食店は、地元食材の利用やカロリーや減塩など健康に 配慮したメニューと彩り鮮やかな盛り付けで、観光情報誌やグルメサイトなどにも数 多く取り上げられている。最も人気のあるメニューは、うどんを主食とし、地元野菜 を使った煮物や天ぷら、刺身、ひとくち和風デザート、食後に黒豆茶を添えた定食 で、客単価は 1,250 円程度である。食に敏感な女性を中心に、ランチ時には大行列が できる。 B 社はかつて業務用製品も製造していたが、大手メーカーの激しい低価格攻勢を受 け、現在ではほとんど最終消費者向け製品に特化している。ただし例外もいくつかあ る。たとえば親子丼で有名なある鶏料理専門店は、B 社のしょうゆの濃厚さと芳 ほう じゅん さに惚れ込み、もう 30 年来、取引が続いている。 B 社の製品ラインアップは多岐にわたるが、大きくつのカテゴリーに分けられ る。第に、基本調味料としてのしょうゆである。伝統的手法で作られた天然醸造し ょうゆ、減塩しょうゆ、大豆も塩も小麦もすべて地元産の原材料で製造した数量限定 DKJC-2B 1 DKJC2-B-W.smd Page 3 16/10/18 19:15 v3.20 しょうゆなどがこれに含まれる。第に、B 社のしょうゆをベースに作られたしょう ゆ関連製品である。ここには、だししょうゆ、こんぶしょうゆ、たまごかけごはんし ょうゆなどのしょうゆ加工品、蕎 用かえし、ドレッシングや鍋つゆなどのたれやつ ゆ類が含まれる。なお、しょうゆ加工品は、正確には JAS 規格B日本農林規格Cの定 義でいう「しょうゆ」には入らないBC 同業他社の動きを見ながら新製品を追加投入してきたため、B 社全体の製品の種類 30 種以上になり、容器の大小を別アイテムと数えると 87 アイテムに上る。製品価 格帯は、しょうゆ業界平均よりも全体的にかなり高めのゾーンに位置する。このう ち、最も販売量が多いのは減塩しょうゆで、番手がだししょうゆである。減塩しょ うゆは、今から約 40 年前に発売されたロングセラー製品である。当時はまだ健康に 対する消費者の意識も低く、業界でも早めに発売を開始した部類に入る。B 社のすべ ての製品は 25 年前から発売されているが、87 アイテムの回転率には今ではかなりば らつきが生じている。 しょうゆ市場は現在、激しい淘 とう の波にさらされている。日本 しょう 協会の調べに  よると、1955 年には全国で 6,000 社あったしょうゆメーカーは、2013 年には 1,330 社 にまで減少している。そのため、2014 年のしょうゆメーカーのシェアは大手社 60 弱、準大手社が約 18 %、残りの 20 数%を 1,300 社以上の中小しょうゆメ ーカーで占める構造となっているBCX 市でも 50 年前にはしょうゆメーカーが 社あったが、現在は B 社を含め社である。しょうゆ出荷数量もピークは 1973 1,294,155 kl で、2015 年には 780,411 kl と減少傾向にある。図表によれば、 JAS 規格でいう「しょうゆ」の世帯当たり年間購入数量も人当たり消費量も減少 傾向にある。また、しょうゆ及びしょうゆ関連製品それぞれの出荷数量について 2008 年を基準として見ると、図表のような傾向となる。近年は世界的な大豆価格 高騰が経営に与える影響も大きい。日本の大豆自給率はわずか%で、しょうゆメー カー各社は原材料の大豆の大半を輸入に頼っている。2008 年以降、大豆の価格は高 止まりのまま推移しており、以前の取引価格の倍になったとされる。国産大豆もその 例外ではない。基本調味料としてのしょうゆの製造販売だけではメーカーの利益が薄 いのが実情である。現在、B 社の年商もかろうじて対前年比 100 %をやや上回る程度 で推移しているが、直営店併設の飲食店の好調な売り上げが貢献している。 DKJC-2B 2 DKJC2-B-W.smd Page 4 16/10/18 19:15 v3.20 B 社の製品は、X 市にある直営店での販売や例外的な業務用需要者との取引以外 は、特別な排他的取引契約はないものの、食品卸 Z 社が一手に引き受けている。Z 社の取扱商品は、国内外の優良メーカーが生産する高付加価値型のこだわりの自然食 品・健康食品全般である。Z 社は国内外に販売先をもつ。主要な取引先は、国内では 百貨店や中~高価格業態のスーパーや自然食品店、国外では東アジアやアメリカなど で日本食材を扱う小売業である。B 社の製品も、これらの店舗で販売されている。B 社と Z 社の取引関係は 50 年に及ぶ。最近では、多くのしょうゆメーカーは自社ホー ムページを立ち上げ、中小メーカーの多くがインターネット販売を行っている。しか Z 社は、B 社がインターネット販売をすることに対して難色を示している。その ため、B 社は会社所在地と自社のしょうゆ製造方法を記載した簡素なホームページを 立ち上げたのみである。インターネット販売にはまだ着手していない。 創業 250 周年を前に、B 社はまもなく 11 代目に継承される。B 社は良くも悪くも 伝統を重視してきたため、現状のままでは著しい成長は期待できない。人口減少社会 を迎え、縮小するしょうゆ市場の下で、生き残りと成長を求めて、危機感をもった 11 代目予定者は中小企業診断士に相談することにした。 BCJAS 規格の「しょうゆ」とは、こいくちしょうゆ、うすくちしょうゆ、たまり しょうゆ、さいしこみしょうゆ及びしろしょうゆのタイプのみを指す。 BC日刊経済通信社のデータより算出。

H28問題要求

第問B配点 20 C B 社のこれまでの製品戦略について、80 字以内で整理せよ。 第問B配点 30 C 11 代目予定者は、自分の代になってからもこれまでの製造スタイルを大切にしながら成長を追求していくつもりでいる。しかしながら、製品アイテムは見直すことを 考えている。 B設問C B 社の今後の成長に必要な製品戦略について、ターゲット層を明確にしたうえで、100 字以内で説明せよ。 B設問C B設問Cで想定したターゲット層に訴求するための、プロモーションと販売の戦 略を 80 字以内で説明せよ。 第問B配点 20 C 年前に開業した直営店併設の飲食店は、売り上げが好調である。B 社が飲食店を 直接経営することによって、どのようなメリットと効果を得られるか。売り上げが向 上すること以外のメリットと効果について、100 字以内で説明せよ。 DKJC-2B 6 DKJC2-B-W.smd Page 8 16/10/18 19:15 v3.20 第問B配点 30 C 昨今の多くの中小しょうゆメーカーでは、インターネット販売を展開している。B 社もまた、新規事業として直接、最終消費者に対するインターネット販売に乗り出し たいと考えている。 B設問C インターネット販売を軌道に乗せるために B 社が採るべきブランド戦略を 50 以内で提案せよ。 B設問C B 社のインターネット販売を利用する顧客にリピートしてもらうために、インタ ーネット上でどのようなマーケティング・コミュニケーションを展開するべきか。 80 字以内で提案せよ。

H27  事例②

B 商店街は、ローカル私鉄の X 駅周辺に広がる商店街である。B 商店街域内の総 面積は約万 m2 <店舗、街路、住宅、公園を含む=であり、約 180 店が出店してい る。商店街運営は B 商店街協同組合が行っており、約割の店舗が組合に加盟して いる。組合には加盟店から選出された理事 13 名、専従職員名が属している。組合 運営費<専従職員給与、街路灯保守費、イベント実施費など=は、月数千円の組合費、 各種補助金、組合事務所のイベントスペース収入、駐車場収入などから賄われる。 現在の代表理事は商店街で寝具店を営む 50 歳代男性である。代表理事が先代から 寝具店を引き継いだ頃、後述する総合スーパーの出店により、経営は厳しいものであ った。しかし、購入者向けのアフターサービスに注力した結果、経営が安定し始め た。現在は後継者に店舗経営を任せ、自身は組合活動に軸足を移している。 現在の代表理事も以前は、持ち回りで選出された他の理事と同じように、運営に対 して消極的な理事の人であった。しかし、寝具店の後継者が決定後、県が主催した セミナーで全国の商店街活性化事例を目にした。このセミナーをきっかけに、後継者 が将来にわたり寝具店を経営し続けるためには、商店街全体の活性化が必要であると 感じ、以降は積極的に組合運営に関与するようになった。その後、代表理事に就任 し、10 年後を見据えた組合運営という方針を打ち出した結果、志を同じくする若手 店主数名の賛同を得るに至った。現在はそれらの店主達が理事に立候補し、理事の平 均年齢は低くなり、逆に運営への関与度は高くなりつつある。この動きを受けて、県 や市、商店街の店主、土地・建物の所有者も組合に協力的になりつつある。 B 商店街の誕生は、明治中期に現在の B 商店街周辺に数千人の工員が勤務する大 規模織物工場が建設されたことに起因する。その後、当該工場の周辺に関連工場が多 数建設され、工場街が形成された。結果、工員を対象とする飲食業、小売業、<狭義 =サービス業等で構成される歓楽街が周辺に形成された。昭和初期には X 駅が開業 し、駅と工場街の間に現在とほぼ同面積の商店街が完成した。第次世界大戦時の空 襲により、工場街は炎上し、商店街も大きな被害を受けたが、戦後、工場街が再生し たのに伴い商店街も復興を成し遂げた。昭和後期に入り、公害問題から工場の移転が 始まり、工員の来店が大幅に減少した。娯楽施設の大半が撤退し、周辺住宅街に住む 住民を対象とした商店街へと変化していった。主力の飲食店も、かつては工員が疲 れを癒す居酒屋という趣の店が多かったが、大人が落ち着いて食事ができる食事 1 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 3 15/10/16 18:08 v6.20 といった趣の店に変わっていった。 同時期に食品販売を得意とする大手総合スーパーチェーンによる織物工場跡地への 出店計画が立ち上がった。総合スーパーは階建てであり、延床面積は商店街の延床 面積に比べて小規模なものとなっている。組合は商店街と総合スーパーを一体とする 商業集積としての魅力向上を期待し、出店を歓迎した。なお、B 商店街は元々歓楽街 としての側面が強く、食品を扱う小売店はほとんどなく、周辺住民は主に遠方の別の 商店街で食品を購入していた。当時の組合は総合スーパー出店を機に「食品販売を提 供する総合スーパー」と「飲食、非食品販売、サービスを提供する商店街」という補完 関係による商店街来訪客の増加を将来像として描いていた。しかし総合スーパー出店 後、そのもくろみは大きく外れた。総合スーパーの低価格の NB 商品や PB 商品が、 低価格志向にある周辺住民の非食品需要も吸収し、多くの非食品小売店が廃業した。 また、総合スーパーに低価格を売りにする外食チェーン店が入店したため、外食需要 もそれらに吸収され飲食店の売上もそれほど伸びなかった。 2000 年以降、B 商店街周辺の環境に変化が起きつつある。それは工場街跡地の再 開発である。空き地となっていた工場街跡地に高価格で販売される高層マンションが 多数開発され、高層マンション街が形成されつつある。そして 2015 年以降も高層マ ンションの建築が計画されている<図は B 商店街周辺の概略図である=。同時に近 年は高層マンション開発を契機とする地価の値上がりを受けて、住宅街の中高年層が 土地・建物を売却し、他地域へ転居する例も増えつつある。この傾向は当面続くもの と見込まれている。現在は人口の流入分が流出分を超過し、周辺人口は増加傾向にあ る。同時に B 商店街の周辺住民の構成も変化しつつある<図は 2015 年と 2005 年の 商圏の年齢別人口である= この間における B 商店街の空き店舗率<店舗物件における空き物件の割合= 2005 年時点で約%、2010 年時点で約%、2015 年時点で約 %となっている。この傾向に代表理事は強い危機感を抱いており、B 商店街が生き残る道を模索し始めてい る。 現在、B 商店街の業種構成は店舗数ベースで飲食業約 65 %、サービス業約 20 %、 非食品小売業約 15 %で、食品小売業はほぼない状況となっている。なお、店舗ごと の床面積は極端には変わらないので、延床面積もほぼ同様の比率である。一方、総合 2 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 4 15/10/16 18:08 v6.20 スーパーの売場構成は延床面積ベースで食品、非食品、飲食、サービスがそれぞれ約 25 %となっている。なお、商店街の各店舗の営業終了時間は、総合スーパーの対応 する売場の営業終了時間に合わせている場合が多い。それは総合スーパーに対抗する 意味合いもあるが、B 商店街が元々歓楽街であったため、当初から営業終了時間が遅 かったことの名残でもある。 代表理事は手始めに、比較的短期間で成果が出やすい取り組みとして、周辺住民に 商店街との接点を持ってもらうイベントを開始した。月に回、県内の農水産物およ び加工品を組合事務所周辺の街路で販売する「物産市」を実施している。食品小売業が ほぼない商店街の弱みを補いつつ、低価格食品販売を主とする総合スーパーと差別化 しながら周辺住民を商店街に呼び込むことを狙っている。代表理事は、イベント業者 任せにせず、自らが県内を回って、大手チェーンにはない、こだわりの商品を販売す る小売店に物産市への参加を説得して回った。結果、当該イベントは集客力を持つイ ベントに成長している。しかし、イベント当日は飲食店、サービス業の売り上げは大 幅に増加するが、非食品小売店の店主からは「売上増加効果が現れていない」といった 不満の声が挙がっている。 代表理事は短期的な課題としてイベントの改善を実現したいと考えている。また総 合スーパーに対して劣勢にある B 商店街の立場を改善するため、総合スーパーとの すみ分けが重要であると考えている。そのために中期的には、環境の変化に対応した 業種誘致が必要だと考えている。また長期的には、顧客と店主、店員が顔見知りとな り親しく会話を交わすような状態になることが理想であると考えている。これらの課 題解決のため、代表理事は、組合および商店街店主への助言を求めて中小企業診断士 に相談することにした。

第問<配点 40 = <設問= 今後、B 商店街はどのような顧客層をターゲットとすべきか。代表理事への助言 内容を 100 字以内で述べよ。 <設問= 設問で解答したターゲット顧客層向けに、新たにどのようなサービス業の業種 を誘致すべきか。代表理事への助言内容を 50 字以内で述べよ。 <設問= 設問で解答した業種の店と B 商店街の主力である既存の飲食店とのテナント・ ミックス<店舗の組み合わせ=の効果を最大化するために、個々の飲食店の店主達は どのようなマーケティング戦略をとるべきか。助言内容を 50 字以内で述べよ。 第問<配点 20 = 物産市当日における非食品小売店の売上向上を実現するためには、非食品小売店の 店主達へどのような助言をすべきか。B 商店街の主な非食品小売店である家具店、食 器店、スポーツ用品店の中からひとつの業種店を対象に選択し、 a 欄の該当する業種 店の番号に○印を付けるとともに、 b 欄に助言内容を 100 字以内で述べよ。 第問<配点 40 = <設問= 代表理事は、B 商店街の魅力向上に向け、食品小売店の誘致が必要であると考え ている。B 商店街はどのような食品小売店を誘致すべきか。当該食品小売店のマー ケティング戦略と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内で述べよ。 5 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 7 15/10/16 18:08 v6.20 <設問= 代表理事は、設問で解答した食品小売店が長期にわたり商店街に定着するため の誘致と連動した新規イベントを実施したいと考えている。どのような新規イベン トを実施すべきか。期待される効果と併せて、代表理事への助言内容を 100 字以内 で述べよ。 6 DKJC-2B

H26 事例②

B 社は、資本金 1,500 万円、従業員 12 ;パートを含む<の旅行業者である。創業 以来、X 市内の商店街に 1 店舗を有している。X 市は中小製造業とベッドタウンが 混在する街である。現在は高齢層比率が高まっているベッドタウンの高齢化対応が地 域課題の 1 つとなっている。B 社の創業は 1990 年、創業者は前社長である。前社長 はもともと県内の大手旅行会社 Y 社の社員であった。史学科出身の前社長は歴史に 関する豊富な知識と話術で、Y 社在籍当時から、添乗員付きパック・ツアーのガイ ドとしてツアー参加者から高く評価されていた。やがて Y 社の方針に縛られずにツ アーを企画したいと希望するようになり、Y 社を退職し B 社を創業した。 創業当時の主力商品は前社長が得意とする、国内外の添乗員付きパック・ツアー ;以下、「一般向けツアー」という。<であった。当時は知名度の低さから顧客獲得に苦 戦する時期がしばらく続いたが、商工会議所主催の X 市名所巡りでガイドをボラン ティアで担当したことをきっかけに新規顧客の獲得に成功した。やがて高い評価が口 コミで広まり X 市内を中心に顧客が増大した。顧客増大と並行して根気強く社員教 育にも力を入れ、新入社員をツアーに同行させ、前社長の知識や話術を吸収させた結 果、前社長が添乗するツアー以外でも高い評価を獲得し、組織として高いリピート率 を得ることに成功した。創業 5 年後に調査会社を通じて実施した X 市内消費者に対 する市場調査では、添乗員付きパック・ツアーの市場シェアがそれまでシェア 1 位で あった Y 社を上回るに至り、2000 年頃までその地位を維持し続けた。 創業直後の 1990 年代前半は一般向けツアーで高い評価を得た B 社であったが、創 業時点で既に一般向けツアーの市場は徐々に縮小しつつあった。その中にあって新商 品を模索する必要に迫られていたが、1990 年代後半に企業からの要望に応じた添乗 員付きの海外研修ツアー;以下、「海外研修ツアー」という。<を主力商品に加えること に成功した。きっかけは、一般向けツアーに参加した X 市内の中規模小売業チェー ンの人事部長から依頼された米国の小売店視察ツアーであった。前社長は当初「小売 ビジネスに役立つようなガイドはできない」と難色を示した。それに対する人事部長 の反応は「視察とバス内の意見交換だけでは時間が持たない。海外で見聞を広めたい という社員の本音もある。研修の時間以外はバスでいつもの歴史の話をして欲しい」 というものであった。このように始まった海外研修ツアーは社員から高い評価を得 て、口コミを通じて X 市内の中小企業を中心に依頼が増加した。2000 年頃には X 1 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 3 14/10/24 14:20 v6.20 内における中小企業の海外研修ツアー市場でシェア 1 位を獲得するに至った。 このように創業からの 10 年間は順調に成長を続けてきた B 社であったが、2000 を過ぎた頃から状況は徐々に変化し始めた。まず大手旅行会社によるパック・ツアー の低価格化、インターネット利用による宿泊先やチケットの予約の簡易化が進み、一 般向けツアーの業績が悪化し始めた。さらに 2008 9 月のリーマンショック後には、 それまでグローバル化の流れの中で海外研修を拡大させていた X 市内中小企業の研 修予算が大幅にカットされ、海外研修ツアーの依頼も減少した。両商品共に X 市内 市場における市場シェアで価格競争力に優る Y 社を下回り、さらに市場規模の縮小 が商品販売の悪化に拍車をかける結果となった。この結果を受け、自身の経営に限界 を覚えた前社長は引退し、B 社社員であった現社長に経営者の座を譲るに至った。 現社長は経営の見直しを模索し始めた。その中で、現社長はかつて高いシェア、リ ピート率を誇った一般向けツアーがなぜ苦戦し始めたのかを調査した。先述の低価格 化、簡易化で若年層離れが起きたことは感じ取っていたが、長期に渡り B 社の顧客 であった高齢層の離反について現社長は理由を理解しかねていた。かつての顧客に対 する調査の結果、高齢層顧客は他社の低価格ツアーを利用したり、自分で宿泊先やチ ケットを予約しているわけではなく、体力的な問題でそもそも旅行に出かけづらくな っているという実態が明らかになった。一方で「行けるものなら好きだった B 社さん のツアーにまた参加したい」という声も多数寄せられた。 これらの調査結果に基づき現社長は B 社商品の見直しに着手した。一般向けツア ーに関しては将来的な廃止を念頭にツアー回数を削減し始めた。また市場規模が回復 する兆しが見えない海外研修ツアーも現状の取引がある企業にとどめ、新規開拓は行 わない方針を決定した。一方で、現社長が開発に取り組んだのは高齢者向け介護付き ツアー;以下、「介護付きツアー」という。<である。このツアーは歩行、食事、入浴、 トイレなどに関して支援・介護が必要な高齢者を対象にした国内旅行限定の添乗員付 きパック・ツアーである。なお、対象となる高齢者だけでなく、家族も参加でき、要 支援・要介護の高齢者の場合は、旅行代金の他に支援・介護レベルによって料金が加 算され、家族の場合は一般向けツアーとほぼ同額で参加ができるという商品である。 まず現社長と社員 1 名の 2 名で、介護に関する資格であるホームヘルパー 2 級の資 格を取得し、商品開発に着手した。はじめは要介護の高齢者を含む 1 家族の添乗から 2 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 4 14/10/24 14:20 v6.20 開始し、次に数組の要介護高齢者と家族によるツアーを開催し、ノウハウを蓄積して いった。並行して他の社員にも関連資格の取得を奨励し、また新しい商品に適した社 員を採用し、安定的な商品供給体制の準備を進めた。そして、開発着手から 1 年後の 2010 年、正式な商品として販売を開始した。当該商品の販売開始時にダイレクトメ ールを発送したところ、高齢となったかつての顧客から喜びの声と共に多数の参加申 込書が送付された。 2014 年現在、B 社のトータルでの顧客数は 2000 年当時に比べて大幅に減少してい るが、介護付きツアーは高価格商品であることから客単価は大幅に向上し、その結 果、売上高や利益は 2000 年頃の水準に回復しつつある。また、X 市内消費者を対象 とした直近の市場調査では、需要の動きをうまくとらえ先行して介護付きツアーを開 始した企業には及ばないものの、市場シェアが迫りつつある。このように業績は回復 傾向にあるとはいえ、B 社は介護付きツアーの新規顧客獲得や、導入したものの活用 が進んでいない顧客データベースの活用などの課題を抱えている。現社長はこれらの 課題に対するアドバイスを求めるため中小企業診断士に相談することとした。 3 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 5 14/10/24 14:20 v6.20 第問;配点 25 < B 社は創業以来、複数の商品を展開しながら今日まで存続し続けている。「2000 時点」と「2014 年時点」のそれぞれにおける B 社の各商品が、下図のプロダクト・ポー トフォリオ・マネジメントのフレームのどの分類に該当するかを当てはまる分類名と ともに記述せよ。「2000 年時点」についてはa 欄に 40 字以内で、「2014 年時点」につい てはb 欄に 60 字以内で、それぞれ記入すること。 なお「相対シェア」は、市場における自社を除く他社のうち最大手と自社のシェアの 比をとったものとする。また、市場の範囲は X 市内とする。

相対シェア プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントのフレーム 第問;配点 25 < B 社は現在、介護付きツアーにより、一度離反した顧客を再び顧客とすることに成 功しつつある。現社長は次に、介護付きツアーの新規顧客獲得を目指している。その ためのコミュニケーション戦略として、SNS サイト上で介護付きツアーの画像や動 画をプライバシー侵害のない範囲で旅行記として紹介している。しかし、要支援・要 介護の高齢者本人にはあまり伝わっていないことが明らかになった。この状況を勘案 し、新規顧客獲得のための新たなコミュニケーション戦略を 100 字以内で述べよ。 4 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 6 14/10/24 14:20 v6.20 第問;配点 30 < 以下の表は、顧客データベースから算出された介護付きツアーのデシル分析* の結 果である。これは、顧客リストからランダムに抽出された 100 世帯の 3 年分の利用実 績データを集計したものである。集計は 1 世帯単位で行われている。商品は 3 4 の国内ツアーのみであり、支援・介護レベルもほぼ同一の顧客を対象としている。  デシル分析結果をもとに、下記の設問に答えよ。 * デシル分析とは、全顧客を一定期間における総利用金額の高い順に 10 等分し、そ の売上構成比を分析するものである。金額の高い順にデシル 1、デシル 2、デシル 3・・・と続く。 660,990 781,950 1 世帯あたりの 平均総利用金額 6,609,900 7,819,500 ⑤デシル 総利用金額 17.5% 20.7% ⑥デシル 総利用金額 シェア**** ①デシル ②世帯数 1 10 2 10 200,300 200,500 ③客単価*** 10 10 199,800 217,782 2,177,820 5.8% 9 10 199,800 221,778 2,217,780 5.9% 8 10 199,800 233,766 2,337,660 6.2% 7 10 199,800 235,764 2,357,640 6.3% 6 10 199,800 239,760 2,397,600 6.4% 5 10 199,800 259,740 2,597,400 6.9% 4 10 199,900 359,820 3,598,200 9.5% 3 10 200,100 560,280 5,602,800 14.9% デシル分析結果** **単純化のため、付き添い家族は 1 名のみのデータを集計している。 *** 1 世帯 1 回あたりの平均利用金額を示す。 ****小数点第 2 位を四捨五入している。 ;設問< デシル分析結果から、B 社の売上の構造はどのような状態にあるか、数値を用い て説明せよ。その上で現在の重要顧客層を特定し、併せて 100 字以内で述べよ。 5 DKJC-2B DKJC2-B-W.mcd Page 7 14/10/24 14:20 v6.20 ;設問< デシル分析結果から、上位顧客と下位顧客の総利用金額の差がどのような要因に よって生じているか、数値を用いて説明せよ。その結果から導かれる B 社が戦略 的にターゲットとすべき顧客像と併せて 120 字以内で述べよ。 第問;配点 20 < 現社長は、介護付きツアーの客単価を高くすることを目指している。そのために は、どのような新商品を開発すべきか、もしくは既存商品をどのように改良すべき か。助言内容を 80 字以内で述べよ。 ただし、B 社が単独で提供し、X 市内の顧客に対して展開する商品に限定する。 6 DKJC-2B

H30 事例③

C 社の概要】

C 社は、1974 年の創業以来、大手電気・電子部品メーカー数社を顧客(以下「顧客 企業」という)に、電気・電子部品のプラスチック射出成形加工を営む中小企業であ る。従業員数 60 名、年商約 9 億円、会社組織は総務部、製造部で構成されている。 プラスチック射出成形加工(以下「成形加工」という)とは、プラスチックの材料を加 熱溶融し、金型内に加圧注入して、固化させて成形を行う加工方法である。C 社では 創業当初、顧客企業から金型の支給を受けて、成形加工を行っていた。 C 社は、住工混在地域に立地していたが、1980 年、C 社同様の立地環境にあった 他の中小企業とともに高度化資金を活用して工業団地に移転した。この工業団地に は、現在、金属プレス加工、プラスチック加工、コネクター加工、プリント基板製作 などの電気・電子部品に関連する中小企業が多く立地している。 C 社のプラスチック射出成形加工製品(以下「成形加工品」という)は、顧客企業で電 気・電子部品に組み立てられ、その後、家電メーカーに納品されて家電製品の一部に なる。主に量産する成形加工品を受注していたが、1990 年代後半から顧客企業の生 産工場の海外移転に伴い量産品の国内生産は減少し、主要顧客企業からの受注量の減 少が続いた。 こうした顧客企業の動向に対応した方策として、C 社では金型設計と金型製作部門 を新設し、製品図面によって注文を受け、金型の設計・製作から成形加工まで対応で きる体制を社内に構築した。また、プラスチック成形や金型製作にかかる技能士など の資格取得者を養成し、さらに OJT によってスキルアップを図るなど加工技術力の 強化を推進してきた。このように金型設計・製作部門を持ち、技術力を強化したこと によって、材料歩留り向上や成形速度の改善など、顧客企業の成形加工品のコスト低 減のノウハウを蓄積することができた。 C 社が立地する工業団地の中小企業も大手電気・電子部品メーカーを顧客としてい たため、C 社同様工業団地に移転後、顧客企業の工場の海外移転に伴い経営難に遭遇 した企業が多い。そこで工業団地組合が中心となり、技術交流会の定期開催、共同受 注や共同開発の実施などお互いに助け合い、経営難を乗り越えてきた。C 社は、この 工業団地組合活動のリーダー的存在であった。 近年、国内需要分の家電製品の生産が国内に戻る傾向があり、以前の国内生産品が 2 戻りはじめた。それによって、C 社ではどうにか安定した受注量を確保できる状態に なったが、顧客企業からの 1 回の発注量が以前よりも少なく、受注量全体としては以 前と同じレベルまでには戻っていない。 最近 C 社は、成形加工の際に金属部品などを組み込んでしまう成形技術(インサー ト成形)を習得し、古くから取引のある顧客企業の 1 社からの受注に成功している。 それまで他社の金属加工品と C 社の成形加工品、そして顧客企業での両部品の組立 という 3 社で分担していた工程が、C 社の高度な成形技術によって金属加工品を C 社の成形加工で組み込んで納品するため、顧客企業の工程数の短縮や納期の短縮、そ してコスト削減も図られることになる。 【生産概要】 製造部は、生産管理課、金型製作課、成形加工課、品質管理課で構成されている。 生産管理課は顧客企業との窓口になり生産計画の立案、資材購買管理、製品在庫管理 を、金型製作課は金型設計・製作を、成形加工課は成形加工を、品質管理課は製品検 査および品質保証をそれぞれ担当している。 主要な顧客企業の成形加工品は、繰り返し発注され、毎日指定の数量を納品する。 C 社の受注量の半数を占める顧客企業 X 社からの発注については、毎週末の金曜日 に翌週の月曜日から金曜日の確定納品計画が指示される。C 社の生産管理課では X 社の確定納品計画に基づき、それにその他の顧客企業の受注分を加え、毎週金曜日に 翌週の生産計画を確定する。日々の各製品の成形加工は、各設備の能力、稼働状況を 考慮して原則週 回計画される。また、生産ロットサイズは長時間を要するプラス チック射出成形機(以下「成形機」という)の段取り時間を考慮して決定される。生産効 率を上げるために生産ロットサイズは受注量よりも大きく計画され、製品在庫が過大 である。C 社の主要製品で、最も生産数量が多い X 社製品 A の今年 7 2 日(月)か 7 31 日(火)までの在庫数量推移を図 1 に示す。製品 A は、毎日 600 個前後の納 品指定数であり、C 社の生産ロットサイズは約 3,000 個で週 1 回の生産を行ってい る。他の製品は、毎日の指定納品数量が少なく、変動することもあるため、製品 A 以上に在庫管理に苦慮している。 3 1  製品 A の在庫数量推移(2018 7 月) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 0 (個) 在庫数量 2 3 4 5 6 9 10 11 12 13 16 17 18 19 20 23 24 25 26 27 30 31(日) 稼働日( 月の日付) (第 1 週) (第 2 週) (第 3 週) (第 4 週) (第 5 週) 成形加工課の作業は、作業者 1 人が 2 台の成形機を担当し、段取り作業、成形機の メンテナンスなどを担当している。また全ての成形機は、作業者が金型をセットし材 料供給してスタートを指示すれば、製品の取り出しも含め自動運転し、指示した成形 加工を終了すると自動停止状態となる。 2 で示す「成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状)」は、製品 A の成形 加工を担当している 1 人の作業者の作業内容である。 成形機の段取り時間が長時間となっている主な原因は、金型、使用材料などを各置 き場で探し、移動し、準備する作業に長時間要していることにある。図 2 で示す「成 形機 1 の段取り作業内容の詳細」は、製品 A の成形加工作業者が、昼休み直後に行っ た製品 B のための段取り作業の内容である。金型は顧客からの支給品もまだあり、C 社内で統一した識別コードがなく、また置き場も混乱していることから、成形加工課 の中でもベテラン作業者しか探すことができない金型まである。また使用材料は、仕 入先から材料倉庫に納品されるが、その都度納品位置が変わり探すことになる。 顧客企業からは、短納期化、小ロット化、多品種少量化がますます要望される状況 にあり、ジャストインタイムな生産に移行するため、C 社では段取り作業時間の短縮 などの改善によってそれに対応することを会社方針としている。 その対策の一つとして、現在、生産管理のコンピュータ化を進めようとしている が、生産現場で効率的に運用するためには、成形加工課の作業者が効率よく金型、材 料などを使用できるようにする必要があり、そのためにデータベース化などの社内準 備を検討中である。 4 【段取り作業】 (時間) 昼休み 成形機 2 段取り作業 製品Aの金型取外し 製品Aの金型を金型 置き場へ移動 製品 B の金型を 金型置き場から 移動 製品 B の材料を 材料置き場から 移動 製品 B の金型取付 材料供給 調整・トライ 1300 1302 1304 1306 1308 1310 1312 1314 1316 1318 1320 1322 1324 1326 1328 1330 1332 1334 1336 1338 1340 右図作業者による成形機 1 段取り作業内容の詳細 作業者 成形機 1 成形機 2 待ち 待ち 待ち 待ち 作業準備 昼休み 休憩 休憩 成形機 1 段取り作業 成形機 1 段取り作業 成形機 1 清掃作業 成形機 2 清掃作業 成形機 2 段取り作業 成形機 2 段取り作業 時間 830 900 930 1000 1030 1100 1130 1200 1230 1300 1330 1400 1430 1500 1530 1600 1630 1700 1730 待ち 待ち 待ち 段取り作業 段取り作業 清掃作業 製品 A 成形加工 製品 B 成形加工 待ち 待ち 段取り作業 段取り作業 清掃作業 製品 C 成形加工 製品 D 成形加工 成形機 2 台持ちのマン・マシン・チャート(現状) 2  成形加工作業者の一日の作業内容 5 1 問(配点 20 点) 顧客企業の生産工場の海外移転などの経営環境にあっても、C 社の業績は維持され てきた。その理由を 80 字以内で述べよ。 2 問(配点 20 点) C 社の成形加工課の成形加工にかかわる作業内容(図 2 )を分析し、作業方法に関す る問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。 3 問(配点 20 点) C 社の生産計画策定方法と製品在庫数量の推移(図 1 )を分析して、C 社の生産計画 上の問題点とその改善策を 120 字以内で述べよ。 4 問(配点 20 点) C 社が検討している生産管理のコンピュータ化を進めるために、事前に整備してお くべき内容を 120 字以内で述べよ。 5 問(配点 20 点) わが国中小製造業の経営が厳しさを増す中で、C 社が立地環境や経営資源を生かし て付加価値を高めるための今後の戦略について、中小企業診断士として 120 字以内で 助言せよ。

H29 事例③

C 社の概要´

C 社は、1947 年の創業で、産業機械やプラント機器のメーカーを顧客とし、金属 部品の加工を行ってきた社長以下 24 名の中小企業である。受注のほとんどが顧客企 業から材料や部品の支給を受けて加工を担う賃加工型の下請製造業で、年間売上高は 約億円である。 現在の社長は、創業者である先代社長から経営を引き継いだ。10 年前、CAD 等の IT の技能を備えた社長の長男A現在常務Bが入社し、設計の CAD 化や老朽化した設 備の更新など、生産性向上に向けた活動を推進してきた。この常務は、高齢の現社長 の後継者として社内で期待されている。 C 社の組織は、社長、常務の他、経理担当名、設計担当名、製造部 20 名で構 成されている。顧客への営業は社長と常務が担当している。 近年、売り上げの中心となっている産業機械・プラント機器の部品加工では、受注 量が減少し、加えて受注単価の値引き要請も厳しい状況が続いている。その対応とし て、現在 C 社では新規製品の事業化を進めている。 °生産概要´ 製造部は機械加工班と製缶板金班で構成され、それぞれ10 名の作業者が加工に従 事している。機械加工班は NC 旋盤、汎用旋盤、フライス盤などの加工機械を保有 し、製缶板金班はレーザー加工機、シャーリング機、プレス機、ベンダー機、溶接機 などの鋼板加工機械を保有している。 C 社では創業以来、顧客の要求する加工精度を保つため機械の専任担当制をとって おり、そのため担当している機械の他は操作ができない作業者が多い。また、各機械 の操作方法や加工方法に関する技術情報は各専任作業者それぞれが保有し、標準化や マニュアル化は進められていない。 加工内容については、機械加工班はコンベアなどの搬送設備、食品加工機械、農業 機械などに組み込まれる部品加工、鋳物部品の仕上げ加工など比較的小物でロットサ イズが大きい機械加工であり、製缶板金班は農業機械のフレーム、建設用機械のバケ ット、各種産業機械の本体カバーなど大型で多品種少量の鋼材や鋼板の加工が中心で ある。 DKJC-2C 1 DKJC2-C-W.smd Page 3 17/10/11 20:46 v3.40 顧客から注文が入ると、受注窓口である社長と常務から、担当する製造部の作業者 に直接生産指示が行われる。顧客は古くから取引関係がある企業が多く、受注品の多 くは各顧客から繰り返し発注される部品である。そのため受注後の加工内容などの具 体的な打ち合わせは、各機械を担当する作業者が顧客と直接行っている。 °新規事業の概要´ 新規事業は、次元 CAD で作成した次元データを用いて、次元形状の加工が できる小型・精密木工加工機「CNC 木工加工機」の事業化である。この新規事業は、 異業種交流の場で常務が耳にした木材加工企業の話がヒントになり進められた。「木 工加工機は大型化、NC 化が進み、加工機導入の際には多額の投資を必要とするよう になった。以前使っていたな・ 旋盤のような汎用性があり操作性が良い加工機が欲 しいが、見つからない」との情報であった。ならい旋盤とは、模型をなぞって刃物が 移動し、模型と同じ形状の加工品を容易に再現できる旋盤である。 常務と設計担当者が中心となり加工機の設計、開発を進め、外部の CNC 制御装置 製作企業も加えて、試作機そして号機の実現にこぎつけた。 しかし、それまで木工加工関連企業とのつながりも情報もない C 社にとって、こ の新規事業の販路開拓をどのように進めるのか、製品開発当初から社内で大きな問題 となっている。C 社は、特に新規顧客獲得のための営業活動を積極的に行った経験が ない。また、販売やマーケティングに関するノウハウもなく、機械商社などの販売チ ャネルもない。 そこで常務が中心となって、木工機械の展示会に出展することから始めた。展示会 では、特徴である精密加工の内容を来展者に理解してもらうため、複雑な形状の加工 を容易に行う CNC 木工加工機の実演を行ったが、それによって多くの来展者の注目 を集めることができた。特に、NC 機械を使用した経験のない家具や工芸品などの木 工加工関係者から、プログラムの作成方法、プログラムの提供の可能性、駆動部や刃 物のメンテナンス方法、加工可能な材質などに関する質問が多くあり、それに答える ことで、CNC 木工加工機の加工精度や操作性、メンテナンスの容易性が来展者から 評価され、C 社内では大きな手応えを感じた。そして展示会後、来展者社から注文 が入り、本格的に生産がスタートしている。この CNC 木工加工機については、各方 DKJC-2C 2 DKJC2-C-W.smd Page 4 17/10/11 20:46 v3.40 面から注目されており、今後改良や新機種の開発を進めていく予定である。 この展示会での成功を参考に、現在は会社案内程度の掲載内容となっているホーム ページを活用して、インターネットで広く PR することを検討している。 CNC 木工加工機の生産は、内部部品加工を機械加工班で、制御装置収納ケースな どの鋼板加工と本体塗装を製缶板金班でそれぞれ行い、それに外部調達した CNC 御装置を含めて組み立てる。これまで製造部では専任担当制で作業者間の連携が少な かったが、この新規事業では、機械加工班と製缶板金班が同じ CNC 木工加工機の部 品加工、組み立てに関わることとなる。なお、最終検査は設計担当者が行う。 これまで加工賃収入が中心であった C 社にとって、付加価値の高い最終製品に育 つものとして CNC 木工加工機は今後が期待されている。 DKJC-2C 3 DKJC2-C-W.smd Page 5 17/10/11 20:46 v3.40 第問A配点 30 B CNC 木工加工機の生産販売を進めるために検討すべき生産管理上の課題とその対 応策を 140 字以内で述べよ。 第問A配点 20 B C 社社長は、現在の生産業務を整備して生産能力を向上させ、それによって生じる 余力を CNC 木工加工機の生産に充てたいと考えている。それを実現するための課題 とその対応策について 120 字以内で述べよ。 第問A配点 20 B C 社では、ホームページを活用した CNC 木工加工機の受注拡大を考えている。展 示会での成功を参考に、潜在顧客を獲得するためのホームページの活用方法、潜在顧 客を受注に結び付けるための社内対応策を 160 字以内で述べよ。 第問A配点 30 B C 社社長は、今後大きな設備投資や人員増をせずに、高付加価値な CNC 木工加工 機事業を進めたいと思っている。これを実現するためには、製品やサービスについて どのような方策が考えられるか、140 字以内で述べよ。 DKJC-2C 4

H28 事例③

C 社の概要£

C 社は、調理用のカット野菜を生産、販売している。C 社は、2013 年に野菜を栽 培する X 農業法人から分離し、設立された企業である。販売先は総菜メーカーや冷 凍食品メーカーが中心で、主に量産される総菜などの原材料となるカット野菜を受注 生産し、年商は約億円である。 カット野菜とは、皮むき、切断、スライス、整形など生野菜を料理素材として下処 理した加工製品である。外食産業や総菜メーカーなど向けの千切り、角切りなどに加 工された製品が需要の中心で、最近ではスーパーマーケットやコンビニエンスストア などで販売されている袋に入ったサラダやカップサラダにも広がっている。国内の野 菜需要全体に占めるカット野菜需要の割合は年々増加している。 カット野菜は、販売先の意向を受けて、野菜の流通を担っている卸売業者や仲卸業 者が、野菜の販売方法の一つとして始めたと言われている。またカット野菜は、販売 先から要望される通年納品に応えるため、常に一定量の野菜を確保する必要がある。 そのため同業者の多くが野菜の調達能力が高い卸売業者や仲卸業者である。 X 農業法人では、市場に出荷できない規格外野菜の有効活用を目的として 2000 からカット野菜の加工を始めたが、その後受注量が増加したため、仕入単価の高い市 場規格品の使用や他産地からの仕入れも必要となり、原材料費率が大きく増加した。 そこで事業収支を明確にし、収益性の向上に努めて加工事業として確立するために分 離し、X 農業法人の 100 %出資子会社として C 社が設立された。C 社の設立当時作 成された社内コスト管理資料A次ページ表Bでは、予想されていた以上の原材料費と 労務費の上昇によって限界利益がマイナスとなっていることが判明し、この傾向は今 でも改善されていない。これは、X 農業法人から独立し改善に向けて努力している ものの、いまだに効果的な生産管理が組織的に行われていないことによる。 工場操業状況は、規格外野菜を主に原料として利用していた時には収穫時期から約 半年間の季節操業となっていたが、市場規格品の使用や他産地からの仕入れによって 工場操業期間は長くなったものの、C 社に受け継がれた後でもまだ約カ月の休業期 間が例年生じている。販売先からは通年取引の要望がある。 C 社の組織は、X 農業法人時代の加工部門責任者が社長となり、製造グループと 総務グループで構成されている。社長は、全体の経営管理の他に営業活動も担ってい DKJC-2C 1 DKJC2-C-W.smd Page 3 16/10/18 19:17 v3.20 る。各製造グループには責任者として正社員の製造リーダー名が配置され、合計 25 名のパート社員がつの製造グループに配置されている。X 農業法人時代から同 じ製造グループに勤めているパート社員が多く、他の製造グループへの移動はない。 総務グループは、正社員名とパート社員名で構成されている。 現在取引関係にある顧客や関連する業界から、C 社と X 農業法人との関係に注目 した新たな取引の要望がある。その中で C 社社長が有望と考えている二つの新事業 がある。一つは、カット野菜を原料としたソースや乾燥野菜などの高付加価値製品の 事業であり、設備投資を必要とする事業である。もう一つは、新鮮さを売りものにし ている中小地場スーパーマーケットなどから要望がある一般消費者向けのサラダ用や 調理用のカット野菜パックの事業であり、現在の製造工程を利用できる事業である。 C 社社長は、まず現状の生産管理を見直し、早急に収益改善を図ることを第の目 標としているが、それが達成された後には新事業に着手してさらなる収益拡大を目指 すことを考えている。 構成比AB 売上高 100.0 原材料費 66.8 労務費 28.1 荷造運賃 9.0 水道光熱費 5.4 その他変動費 2.1 変動費計 111.4 限界利益 11.4 人件費 5.8 修繕費 2.4 減価償却費 5.1 その他固定費 2.8 固定費計 16.1 営業利益 27.5 C 社作成の社内コスト管理資料 C 社の年間クレーム件数 クレーム項目 件数 構成比AB カット形状不均一 54 50.5 鮮度劣化 21 19.6 異物混入 11 10.3 色合い不均一 87.5 異臭 4 3.7 その他 9 8.4 107 100.0 DKJC-2C 2 DKJC2-C-W.smd Page 4 16/10/18 19:17 v3.20 生産概要£ C 社のカット野菜製造工程は、顧客別に編成・グループ化され、現在つの製造グ ループで製造を行っている。各製造グループでは主に素材選別、皮むき、カット、洗 浄、計量・パック・検査、出荷の各工程を持っている。各製造グループは、生産高を 日常の管理項目として管理してきた。 顧客からの注文は、各製造グループに直接入り、各製造グループで各々生産計画を 立て、原材料調達から出荷まで行っている。製造グループごとの生産管理によって、 同種類の原材料調達における単価の差異、加工ロスによる歩留りの低下、出荷のため の輸送費用のロス、製造グループ間での作業員の移動の制限などがみられる。 製造部門の大きな問題は品質不良であり、前ページの表に示すような製品クレー ムが発生している。その原因を製造グループ全員でブレーンストーミングし、作成 した特性要因図が図である。 また食品工場としての施設・設備面などの衛生管理、作業方法などの衛生管理、ど ちらの管理レベルにも課題があり、販売先からの改善要求もある。 C 社作成の加工不良に関する特性要因図 加工不良が多い 施設・機械 原材料 作業方法 刃物交換・研磨 のルールがない フードスライサー の刃が切れない 日常点検不十分 メンテナンス 技術がない チョコ停する 温度管理 設備がない 加工場の温度 管理ができない 作業ミス 注意不足 意識不足 勘違い 経験不足 衛生管理意識が低い 品質意識が低い 教育不足 加工スキル不足 製造チームによる 加工スキルの差がある 規格外の使用 曲がりがある 形状不揃い 偏心がある 水切りの不備 洗浄後の水分 が残っている 規格外の使用 大きさに バラツキがある 規格品の使用 長時間の加工場内 製品放置 鮮度の劣化 仕掛品が多い 異物混入 衛生管理 ルールがない 人によって 作業方法が違う カット形状不均一 標準作業の不備 製造チームごとの加工 製造チーム間稼動アンバランス 製造チーム間の作業員移動がない DKJC-2C 3 DKJC2-C-W.smd Page 5 16/10/18 19:17 v3.20 第問A配点 20 B カット野菜業界における C 社の a 強みと b 弱みを、それぞれ40 字以内で述べよ。 第問A配点 30 B 現在 C 社が抱えている最大の経営課題は、収益改善を早急に図ることである。生 産管理面での対応策を 160 字以内で述べよ。 第問A配点 20 B C 社では、クレームを削減する改善活動を計画している。このクレーム改善活動を 最も効果的に実施するために、着目するクレーム内容、それを解決するための具体的 対応策を 120 字以内で述べよ。 第問A配点 30 B C 社社長は、経営体質の強化を目指し、今後カット野菜の新事業による収益拡大を 狙っている。またその内容は、顧客からの新たな取引の要望、および C 社の生産管 理レベルや経営資源などを勘案して計画しようとしている。この計画について、中小 企業診断士としてどのような新事業を提案するか、その理由、その事業を成功に導く ために必要な社内対応策とともに 160 字以内で述べよ。 DKJC-2C 4

H27 事例③

C 社の概要

C 社は、建設資材を主体に農業機械部品や産業機械部品などの鋳い もの 製品を生産、販 売している。建設資材の大部分は下水道や、埋設された電気・通信ケーブル用のマン ホールの蓋ふた である。農業機械部品はトラクターの駆動関連部品、産業機械部品はブル ドーザーやフォークリフト、工作機械の構造関連部品などである。取引先は、マンホ ール蓋については土木建設企業、農業機械部品や産業機械部品については各部品メー カーである。 C 社はマンホール蓋などの鋳物工場として 1954 年に創業した。会社組織は営業部、 設計部、製造部、総務部からなっている。現在の従業員数は 50 名、一般にK 職場 といわれる作業環境が影響して若手人材確保が難しく、高齢化が進んでいる。年商は 10 億円である。 公共事業予算の縮小や海外製品との競争激化などの影響を受け、マンホール蓋の受 注量が減少し、売上高が低迷した時期があった。その対応として C 社では、中小鋳 物工場が減少するなか、積極的に鋳ちゅう ぞう 工程の生産能力の増強を進めるとともに、機 械加工工程と塗装工程の新設により一貫生産体制を確立することで、農業機械部品と 産業機械部品の受注獲得に成功した。その際、鋳造技術に精通した中堅エンジニア 名を社内から選抜して営業部をつくり、新市場の開拓を行わせたことも大きな力とな った。 現在の売上構成比は、建設資材 55 %、農業機械部品 30 %、産業機械部品 15 %と なっている。農業機械部品と産業機械部品の受注量は増加傾向にあるが、これらの部 品では顧客からの軽量化、複雑形状化要求が強くなっていて、鋳造技術の向上が求め られている。 さらに現在、自動車部品次下請企業でもある産業機械部品の取引先から、C 社と しては新規受注となる自動車部品の生産依頼があり、その獲得に向けて検討を進めて いる。 C 社の生産概要 工程は図に示すように鋳造工程、後処理工程、機械加工工程、塗装工程、検査発 送工程の工程である。 1 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 3 15/10/16 18:09 v6.20 C 社の生産工程 鋳造工程 後処理工程 機械加工工程 塗装工程 検査発送工程 電気炉で金属を溶かす   解造   鋳型に溶かした金属を注入する   鋳仕上げ 機械加工   型ばらし     製品についている砂を落とし 不要な突起等をとる 製品表面に塗装する 要求仕様に機械加工する 冷却後 鋳型から製品を取り出す 枠の中に木型を置き、砂を詰めて鋳型をつくる 主要製品のマンホール蓋は、地方公共団体や通信会社などの事業主体ごとに仕様が 異なるため品種が多く、さらにこれら事業主体の予算確定後、C 社に発注が行われる ため受注量の季節変動が大きい。このため、営業部で得ている顧客情報の予想を基に 需要の多い規格品などについてはあらかじめ見込生産し、受注が確定すると在庫品か ら納品する。一方、農業機械部品や産業機械部品は取引先からの受注が確定した製品 を生産している。 生産計画は、鋳造工程の計画のみが立案される。その立案方法は、まず受注内容が 確定した製品について納期を基準に計画し、さらに余力部分にマンホール蓋などの見 込生産品を加えて作成する。鋳造工程以降の後処理工程、機械加工工程、塗装工程、 検査発送工程は、前工程から運搬されてきた仕掛品の品種、数量を確認した上で、段 取り回数が最小になるようそれぞれの工程担当者が加工順を決めている。日回 ;ロット<の鋳造作業が行われているが、農業機械部品や産業機械部品の納期遅延が 生じている。その対策のつとして C 社では、受注処理、生産計画、生産統制、在 庫管理などを統合した IT 化の検討を進めている。 新規受注の問い合わせがあった場合は、営業部が顧客と技術的な打ち合わせを行い 顧客の要望を把握し、その内容を設計部に伝え図面等仕様書を作成する。その仕様書 2 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 4 15/10/16 18:09 v6.20 が顧客と合意されると、製造部に引き渡して生産準備し、生産計画に織り込んで、資 材調達の後製造される。 改善チームによる調査結果 C 社では現在、自動車部品の新規受注を目指して、製造部内に改善チームをつく り、生産能力向上を目的とした改善活動を実施している。 それによると、製造現場では、鋳造工程後の仕掛品が多く、その置き場に大きなス ペースが必要になり、フォークリフトによる製品の移動は、散在する仕掛品置き場を 避けて走行している。またこの仕掛品によって、多台持ちを行っている機械加工工程 の作業についても設備間の移動が非常に困難な状況である。このため、製造リードタ イムが長期化し納期遅延が生じる原因となっている。 C 社では工場全体の生産能力を鋳造工程の処理能力で把握しており、受注増への対 応策として鋳造工程の生産能力増強を特に進めてきた。しかし、改善チームが行った マンホール蓋の主力製品の工程分析によると、図に示すように機械加工工程がネッ ク工程となっていた。この結果は他製品の工程分析でも同様の傾向を示していて、機 械加工工程の残業が日常的に生じている原因が判明した。 そこで改善チームは、機械加工工程の設備稼働状況を調査し、図に示す結果を得 た。稼働率は 48 %と低く、非稼働として停止 37 %、空転 15 %となっている。停止 は、刃物、治 の交換や加工前後の製品運搬、機械調整などの段取り作業を主な要因 として生じている。また空転は、加工が終了し製品を脱着する必要があるとき、作業 員の作業遅れによって設備が待っている状態により生じている。 3 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 5 15/10/16 18:09 v6.20 主力マンホール蓋ロット当たりの工程別加工時間 鋳造工程 後処理工程 機械加工工程 塗装工程 検査発送工程 160 140 120 100 80 60 40 20 0 () 機械加工工程設備稼働状況 稼働 48 空転 15 停止 37 第問;配点 40 < C 社では、現在取引している産業機械部品メーカーから新規に自動車部品の生産依 頼があり、新規受注の獲得に向けて検討している。この計画について以下の設問に答 えよ。 ;設問< C 社が自動車部品分野に参入する場合、強みとなる点をつあげ、それぞれ40 字以内で述べよ。 4 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 6 15/10/16 18:09 v6.20 ;設問< 自動車部品の受注獲得は、C 社にとってどのようなメリットがあるのか 100 字以 内で述べよ。 ;設問< 自動車部品の受注獲得には、自動車業界で要求される短納期に対応する必要があ る。そのためにはどのような改善策が必要なのか、100 字以内で述べよ。 第問;配点 20 < C  社の設備投資は、鋳造工程が優先されてきた。これによって生産工程に生じてい る問題点と、その改善策を 100 字以内で述べよ。 第問;配点 20 < C 社は、納期遅延の解消を目的に生産管理の IT 化を計画している。それには、ど のように納期管理をし、その際、どのような情報を活用していくべきか、120 字以内 で述べよ。 第問;配点 20 < 海外製品との競争が厳しい時代のなかで、今後も C 社は国内生産を維持する考え である。そのために C 社が強化すべき点は何か、その理由とともに 140 字以内で述 べよ。 5 DKJC-2C

H26 事例③

C 社の概要

C 社は、世界市場で著名かつ高額な精密機器の構成部品となる超精密小型部品を生 産、販売している。C 社で生産される超精密小型部品の約 90 %は、主要取引先であ る大手精密機器メーカー X 社の精密部品事業部を経由して国内外の精密機器メーカ ーに納品されて組み込まれている。 C 社は、自動旋盤による精密部品加工業として 1993 年に先代の経営者が創業した。 そして経営を継承した現社長が超精密加工と超小型加工技術に特化して X 社との取 引に成功し、新たに熱処理設備およびメッキ設備を加えて精密部品の一貫生産体制を つくることで X 社からの受注を拡大してきた。 現在の従業員数は 48 名、近年の年商は 7 億円前後で推移している。組織は、製造 部、総務部で構成されている。製造部は、顧客からの受注、生産計画、材料調達、精 密部品生産、検査、出荷など受注・生産・出荷に関するすべての業務を担当し、管理 スタッフ、設備オペレーター、製品検査担当で構成されている。新規受注などの営業 業務については社長と専務の役員 2 名で対応している。 主要取引先である X 社には、売上面ばかりでなく製品設計や工程設計などの生産 技術や管理技術についても指導を受けるなど、経営のかなりの面で依存している。 }C 社の生産概要 C 社の生産工程は、切削工程、熱処理工程、メッキ工程、検査工程の4工程から構 成される。自動旋盤による切削工程では、材料供給を行う設備オペレーターの監視下 24 時間稼働による連続生産が行われ、その他の工程では、前日までに切削工程で 加工された精密部品を昼間 8 時間稼働でロット処理している。 生産計画は、X 社から受注する精密部品約 100 品種の受注数量を基に、設備稼働 状況や材料保有状況など C 社社内の都合に合わせて 1 カ月ごとに前月末に作成され る。X 社からの確定受注数量は、X 社顧客からの翌月 1 カ月の受注予想数量であり、 C 社へは毎月前月の中旬に FAX で送られてくる。C 社では、X 社からの確定受注数 量を基に、精密部品の各品種 1 カ月確定受注分を切削工程の各自動旋盤に割り付け負 荷調整し、生産計画がつくられている。その他の熱処理工程、メッキ工程、検査工程 については、切削工程の加工終了後に各工程担当者の判断で加工順を決めている。X 1 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 3 14/10/24 14:22 v6.20 社への納品は月内であればよいことになっているため、生産完了後順次全品納入して いる。 生産計画数は、最近増加傾向にある切削工程での加工不良率を加味して決めてい る。切削工程の加工精度は、自動旋盤の精度に左右される。現在の経営計画には自動 旋盤の更新計画はないため、設備オペレーターが故障対応に主眼を置いて、それぞれ の経験で行っている自動旋盤のメンテナンスについての対策が必要となっている。 C 社で生産される精密部品に使われている原材料は、特殊仕様品であり高額な材料 が指定されている。納期は材料商社に発注後約 2 週間であるが、月末の在庫数、翌月 の生産計画数と翌々月前半の生産予測数を勘案してほぼ 2 カ月分の必要量が確保でき るよう毎月月末に定期発注していて、在庫量の増加傾向がみられる。C 社のコストに 占める原材料費の割合は高く、上述した切削工程での加工不良率の増加による歩留り の低下傾向とともに問題視されている。 }C 社の主要取引先 X 社の動向 主要取引先 X 社は、精密機器メーカーに精密部品を供給する精密部品加工専門企 業として発展してきた。現在は精密部品事業と精密機器事業の 2 つの事業部を有し、 創業時の得意分野であった精密部品の生産は外部に依存し、X 社の工場では精密機 器の組立、検査、出荷業務が中心となっている。 X 社の精密部品事業部では、国内外顧客約 50 社から受注される約 200 品種の精密 部品を取り扱っている。X 社の主要な顧客からは、大日程生産計画に基づいた 3 月および中日程生産計画に基づいた 1 カ月の発注情報の内示が毎月あり、確定発注は 1 週間ごとにある。X 社では、納品リードタイム 1 週間に対応するために品種ごとに 在庫を管理している。 X 社の精密部品事業部は、売上高の約半数を海外に依存しており、近年生産拠点 を海外にシフトし、部品も現地調達化を進めている。そのため、精密部品事業部では 国内発注量の減少が続いている。そこで X 社では、精密部品事業部の国内部品調達 および物流の合理化計画を進めている。これまで国内調達部品は品種別に分けて C 社を含めた国内協力企業数社から調達していたが、この計画では超精密加工と超小型 加工技術の評価が高く、必要な生産能力を有する C 1 社に集約し、同時に X 社の 2 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 4 14/10/24 14:22 v6.20 業務コストの削減を狙って、これまで X 社が行ってきた精密部品の在庫管理および 受注・発送業務も C 社に業務移管することが検討されている。具体的には、X 社が 入手する顧客の 3 カ月、1 カ月発注情報および 1 週間ごとの確定発注情報を C 社とオ ンライン化し、C 社から直接顧客に納品させるものである。また、この業務の移管に 伴って C 社に支払う業務委託費についても検討されている。 この計画が実施されると、受注情報は X 社の顧客からの受注情報となり、C 社の 納品リードタイムは 1.5 カ月から 1 週間に短縮され、各品種の 1 回の受注ロットは X 社の各顧客からの 1 週間分の確定受注数量となり大幅に縮小される。このため、 生産システムの大幅な見直しが急務になる。 第問:配点 10 ; C 社の創業からの事業変遷を理解した上で、精密小型部品加工業界における C の強みと弱みを 60 字以内で述べよ。 第問:配点 20 ; C 社の切削工程で問題視されている加工不良率の増加について、その改善を図るた めに必要な具体的対応策を 100 字以内で述べよ。 第問:配点 40 ; C 社では、主要取引先 X 社精密部品事業部の国内部品調達および物流の合理化計 画に対応するための対策が検討されている。この課題について、以下の設問に答え よ。 3 DKJC-2C DKJC2-C-W.mcd Page 5 14/10/24 14:22 v6.20 :設問; C 社が X 社の唯一の国内調達先となり、部品在庫管理および受注・発送業務の 移管が行われると、C 社にはどのようなメリットがあるのか、100 字以内で述べ よ。 :設問; X 社からの業務の移管に対応するためには、C 社の生産計画や資材調達計画を今 後どのように改革していくことが必要となるのか、160 字以内で述べよ。 第問:配点 30 ; C 社社長は、主要取引先 X 社で進められている国内部品調達先の集約化の動きに 対応して、X 社との取引を高める一方で、X 社以外の販路開拓を行う方針である。 この方針を実現するためには、中小企業診断士としてどのような提案を行うか、C の経営資源に注目して 160 字以内で述べよ。 4 DKJC-2C

H30 事例④

D 社は資本金 5,000 万円、従業員 55 名、売上高約 15 億円の倉庫・輸送および不 動産関連のサービス業を営んでおり、ハウスメーカーおよび不動産流通会社、ならび に不動産管理会社およびマンスリーマンション運営会社のサポートを事業内容として いる。同社は、顧客企業から受けた要望に応えるための現場における工夫をブラッ シュアップし、全社的に共有して一つ一つ事業化を図ってきた。 D 社は、主に陸上貨物輸送業を営む E 社の引越業務の地域拠点として 1990 年代半 ばに設立されたが、新たなビジネスモデルで採算の改善を図るために、 2 年前に家 具・インテリア商材・オフィス什器等の大型品を二人一組で配送し、開梱・組み立 て・設置までを全国で行う配送ネットワークを構築した。 同社は、ハウスメーカーが新築物件と併せて販売するそれらの大型品を一度一カ所 に集め、このネットワークにより一括配送するインテリアのトータルサポート事業を 開始し、サービスを全国から受注している。その後、E 社の子会社 F 社を吸収合併 することにより、インテリアコーディネート、カーテンやブラインドのメンテナン ス、インテリア素材調達のサービス業務が事業に加わった。 さらに、同社は、E 社から事業を譲り受けることにより不動産管理会社等のサポー ト事業を承継し、マンスリーマンションのサポート、建物の定期巡回やレンタルコン テナ点検のサービスを提供している。定期巡回や点検サービスは、不動産巡回点検用 の報告システムを活用することで同社の拠点がない地域でも受託可能であり、全国の 建物を対象とすることができる。 D 社は受注した業務について、協力個人事業主等に業務委託を行うとともに、配 送ネットワークに加盟した物流業者に梱包、発送等の業務や顧客への受け渡し、代金 回収業務等を委託しており、協力個人事業主等の確保・育成および加盟物流業者との 緊密な連携とサービス水準の把握・向上がビジネスを展開するうえで重要な要素に なっている。 また、D 社は顧客企業からの要望に十分対応するために配送ネットワークの強化 とともに、協力個人事業主等ならびに自社の支店・営業所の拡大が必要と考えてい る。同社の事業は労働集約的であることから、昨今の人手不足の状況下で、同社は事 業計画に合わせて優秀な人材の採用および社員の教育にも注力する方針である。 D 社と同業他社の今年度の財務諸表は以下のとおりである。 2 貸借対照表 (単位:百万円) D 同業 他社 D 同業 他社 <資産の部> <負債の部> 流動資産 388 552 流動負債 290 507  現金及び預金 116 250  仕入債務 10 39  売上債権 237 279  短期借入金 35 234  たな卸資産 10 1  未払金 43  前払費用 6 16  未払費用 211 87  その他の流動資産 19 6  未払消費税等 19 50 固定資産 115 64  その他の流動負債 15 54  有形固定資産 88 43 固定負債 34 35   建物 19 2 負債合計 324 542   リース資産 41 <純資産の部>   土地 66 資本金 50 53   その他の有形固定資産 3 資本剰余金 114 3  無形固定資産 18 6 利益剰余金 15 18  投資その他の資産 9 15 純資産合計 179 74 資産合計 503 616 負債・純資産合計 503 616 損益計算書 (単位:百万円) D 同業他社 売上高 1,503 1,815 売上原価 1,140 1,635  売上総利益 363 180 販売費及び一般管理費 345 121  営業利益 18 59 営業外収益 2 1 営業外費用 2 5  経常利益 18 55 特別損失 1  税引前当期純利益 18 54 法人税等 5 30  当期純利益 13 24 3 1 問(配点 24 点) (設問 1 D 社と同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較して D が優れていると考えられる財務指標を つ、D 社の課題を示すと考えられる財務 指標を つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、その値を⒝欄に記入せ よ。なお、優れていると考えられる指標を①の欄に、課題を示すと考えられる指標 を②、③の欄に記入し、⒝欄の値については、小数点第 3 位を四捨五入し、単位を カッコ内に明記すること。 (設問 2 D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較して D 社が優れてい る点と D 社の課題を 50 字以内で述べよ。 2 問(配点 31 点) D 社は今年度の初めに F 社を吸収合併し、インテリアのトータルサポート事業の サービスを拡充した。今年度の実績から、この吸収合併の効果を評価することになっ た。以下の設問に答えよ。なお、利益に対する税率は 30 %である。 (設問 1 吸収合併によって D 社が取得した F 社の資産及び負債は次のとおりであった。 (単位:百万円) 流動資産 99 流動負債 128 固定資産 91 固定負債 10 合 計 190 合 計 138 4 今年度の財務諸表をもとに①加重平均資本コスト(WACC)と、②吸収合併によ り増加した資産に対して要求されるキャッシュフロー(単位:百万円)を求め、その 値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、株主資本に対する資本コストは 8 %、負債に対する資本コストは 1 %とする。また、⒜欄の値については小数点第 3 位を四捨五入すること。 (設問 2 インテリアのトータルサポート事業のうち、吸収合併により拡充されたサービス の営業損益に関する現金収支と非資金費用は次のとおりであった。 (単位:百万円) 収  益 収  入 400 費  用 支  出 395 非資金費用  1 企業価値の増減を示すために、吸収合併により増加したキャッシュフロー(単位: 百万円)を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。⒜欄の値について は小数点第 3 位を四捨五入すること。また、吸収合併によるインテリアのトータル サポート事業のサービス拡充が企業価値の向上につながったかについて、(設問 1 で求めた値も用いて理由を示して⒞欄に 70 字以内で述べよ。なお、運転資本の増 減は考慮しない。 (設問 3 (設問 2 )で求めたキャッシュフローが将来にわたって一定率で成長するものとす る。その場合、キャッシュフローの現在価値合計が吸収合併により増加した資産の 金額に一致するのは、キャッシュフローが毎年度何パーセント成長するときか。 キャッシュフローの成長率を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。なお、⒜欄の成 長率については小数点第 3 位を四捨五入すること。 5 3 問(配点 30 点) D 社は営業拠点として、地方別に計 3 カ所の支店または営業所を中核となる大都 市に開設している。広域にビジネスを展開している多くの顧客企業による業務委託の 要望に応えるために、D 社はこれまで営業拠点がない地方に営業所を 1 カ所新たに 開設する予定である。 今年度の売上原価と販売費及び一般管理費の内訳は次のとおりである。以下の設問 に答えよ。 (単位:百万円) 売上原価 1,014 外注費 782 その他 232 販売費及び一般管理費 33 1,047 売上原価 126 販売費及び一般管理費 312 支店・営業所個別費 99 給料及び手当 79 賃借料 16 その他 4 本社費・共通費 213 438 (設問 1 来年度は外注費が 7 %上昇すると予測される。また、営業所の開設により売上高 550 百万円、固定費が 34 百万円増加すると予測される。その他の事項に関して は、今年度と同様であるとする。 予測される以下の数値を求め、その値を⒜欄に、計算過程を⒝欄に記入せよ。 ①変動費率(小数点第 3 位を四捨五入すること) ②営業利益(百万円未満を四捨五入すること) 6 (設問 2 D 社が新たに営業拠点を開設する際の固定資産への投資規模と費用構造の特徴 について、60 字以内で説明せよ。 (設問 3 (設問 2 )の特徴を有する営業拠点の開設が D 社の成長性に及ぼす当面の影響、 および営業拠点のさらなる開設と成長性の将来的な見通しについて、60 字以内で 説明せよ。 4 問(配点 15 点) D 社が受注したサポート業務にあたる際に業務委託を行うことについて、同社の事 業展開や業績に悪影響を及ぼす可能性があるのはどのような場合か。また、それを防 ぐにはどのような方策が考えられるか。70 字以内で説明せよ

H29 事例④

D 社は、所在地域における 10 社の染色業者の合併によって 70 年前に設立され、 それ以来、染色関連事業を主力事業としている。現在、同社は、80 の株式を保有 する子会社である D-a 社とともに、同事業を展開している。D 社の資本金は億円 で、従業員は D 社単体A親会社B 150 名、子会社である D-a 社が 30 名である。 親会社である D 社は織物の染色加工を主たる業務とし、子会社である D-a 社がそ の仕立て、包装荷造業務、保管業務を行っている。先端技術を有する D 社の主力工 場においてはポリエステル複合織物を中心に加工作業を行っているが、他方で、人工 皮革分野やマイクロファイバーにおいても国内のみならず海外でも一定の評価を得て いる。またコーティング加工、起毛加工などの多様な染色加工に対応した仕上げ、後 処理技術を保有し、高品質の製品を提供している。 現状における D 社の課題をあげると、営業面において、得意先、素材の変化に対 応した製品のタイムリーな開発と提案を行い、量・質・効率を加味した安定受注を確 保すること、得意先との交渉による適正料金の設定によって採算を改善すること、生 産面においては、生産プロセスの見直し、省エネルギー診断にもとづく設備更新、原 材料の VA および物流の合理化による加工コスト削減があげられている。 D 社は新規事業として発電事業に着手している。D 社の所在地域は森林が多く、 間伐等で伐採されながら利用されずに森林内に放置されてきた小径木や根元材などの 未利用木材が存在しており、D 社はこれを燃料にして発電を行う木質バイオマス発 電事業を来年度より開始する予定である。同社所在の地方自治体は国の基金を活用す るなどして木質バイオマス発電プラントの整備等を支援しており、同社もこれを利用 することにしているA会計上、補助金はプラントを対象に直接減額方式の圧縮記帳を 行う予定であるB。この事業については、来年度に D 社の関連会社として D-b 社を 設立し、D 社からの出資千万円および他主体からの出資千万円、銀行からの融 12 億円を事業資金として、木質バイオマス燃料の製造とこれを利用した発電事業、 さらに電力販売業務を行う。なお、来年度上半期にはプラント建設、試運転が終了 し、下半期において商業運転を開始する予定である。 以下は、当年度の D 社と同業他社の実績財務諸表である。D 社は連結財務諸表で ある一方、同業他社は子会社を有していないため個別財務諸表であるが、同社の事業 内容は D 社と類似している。 DKJC-2D 1 DKJC2-D-W.smd Page 3 17/10/11 20:46 v3.40 貸借対照表 A単位:百万円B D 同業他社 D 同業他社 <資産の部> <負債の部> 流動資産 954 798 流動負債 636 505 現金及び預金 395 250 仕入債務 226 180 売上債権 383 350 短期借入金 199 200 棚卸資産 166 190 その他 211 125 その他 10 8 固定負債 1,807 602 固定資産 2,095 1,510 長期借入金 1,231 420 有形固定資産 1,969 1,470 社債 374 建物 282 150 リース債務 38 42 機械設備 271 260 退職給付引当金 164 140 リース資産 46 55 負債合計 2,443 1,107 土地 1,350 1,000 <純資産の部> その他 20 5 資本金 200 250 投資その他の資産 126 40 資本剰余金 100 250 投資有価証券 111 28 利益剰余金 126 701 その他 15 12 非支配株主持分 180 純資産合計 606 1,201 資産合計 3,049 2,308 負債・純資産合計 3,049 2,308 DKJC-2D 2 DKJC2-D-W.smd Page 4 17/10/11 20:46 v3.40 損益計算書 A単位:百万円B D 同業他社 売上高 3,810 2,670 売上原価 3,326 2,130 売上総利益 484 540 販売費及び一般管理費 270 340 営業利益 214 200 営業外収益 32 33 営業外費用 70 27 経常利益 176 206 特別損失 120 税金等調整前当期純利益 56 206 法人税等 13 75 非支配株主損益 16 当期純利益 27 131 営業外収益は受取利息・配当金、営業外費用は 支払利息、特別損失は減損損失および工場閉鎖 関連損失である。また、法人税等には法人税等 調整額が含まれている。 DKJC-2D 3 DKJC2-D-W.smd Page 5 17/10/11 20:46 v3.40 第問A配点 25 B A設問B D 社と同業他社のそれぞれの当年度の財務諸表を用いて経営分析を行い比較し た場合、D 社の課題を示すと考えられる財務指標をつ、D 社が優れていると思 われる財務指標をつ取り上げ、それぞれについて、名称を a 欄に、財務指標の値 b 欄に記入せよ。なお、解答にあたっては、①、②の欄に D 社の課題を示す指 標を記入し、③の欄に D 社が優れていると思われる指標を記入すること。また、 b 欄の値については、小数点第位を四捨五入し、カッコ内に単位を明記するこ と。 A設問B D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を 40 字以内で述べよ。 第問A配点 18 B A設問B 以下の来年度の予測資料にもとづいて、染色関連事業の予測損益計算書を完成さ せよ。なお、端数が生じる場合には、最終的な解答の単位未満を四捨五入するこ と。 <予測資料> 当年度の損益計算書における売上原価のうち 1,650 百万円、販売費及び一般管理 費のうち 120 百万円が固定費である。当年度に一部の工場を閉鎖したため、来期に は売上原価に含まれる固定費が 100 百万円削減されると予測される。また、当年度 の売上高の 60 を占める大口取引先との取引については、交渉によって納入価格 が% 引き上げられること、さらに、材料価格の高騰によって変動製造費用が 上昇することが見込まれる。なお、その他の事項に関しては、当年度と同様で あるとする。 DKJC-2D 4 DKJC2-D-W.smd Page 6 17/10/11 20:46 v3.40 予測損益計算書 A単位:百万円B 売上高 A B 売上原価AB 売上総利益 A B 販売費及び一般管理費 A B 営業利益 A B A設問B 発電事業における来年度の損益は以下のように予測される。発電事業における予 想営業利益A損失の場合には を付すことBを計算せよ。 <来年度の発電事業に関する予測資料> 試運転から商業運転に切り替えた後の売電単価はkWh あたり 33 円、売電量は 12 百万 kWh である。試運転および商業運転に関する費用は以下のとおりである。 A単位:百万円B 試運転 商業運転 年間変動費 60 210 年間固定費 370 A設問B 再来年度以降、発電事業の年間売電量が 40 百万 kWh であった場合の発電事業 における年間予想営業利益を計算せよ。また、売電単価がkWh あたり何円を下 回ると損失に陥るか。設問の予測資料にもとづいて計算せよ。なお、売電単価は 円単位で設定されるものとする。 DKJC-2D 5 DKJC2-D-W.smd Page 7 17/10/11 20:46 v3.40 第問A配点 29 B A設問B 染色関連事業の収益性を改善するために、設備更新案を検討中である。以下に示 す設備更新案にもとづいて、第 X1 年度末の差額キャッシュフローAキャッシュフ ローの改善額Bを解答欄に従って計算したうえで、各年度の差額キャッシュフロー を示せ。なお、利益に対する税率は 30 %、更新設備の利用期間においては十分な 利益が得られるものとする。また、マイナスの場合には を付し、最終的な解答に おいて百万円未満を四捨五入すること。 <設備更新案> X1 年度初めに旧機械設備に代えて汎用機械設備を導入する。これによって、 従来の染色加工を高速に行えることに加えて、余裕時間を利用して新技術による染 色加工を行うことができる。 旧機械設備を新機械設備A初期投資額 200 百万円、耐用年数年、定額法償却、 残存価額円Bに取り換える場合、旧機械設備A帳簿価額 50 百万円、残存耐用年数 年、定額法償却、残存価額円Bの処分のために 10 百万円の支出が必要となる A初期投資と処分のための支出は第 X1 年度初めに、旧機械設備の除却損の税金へ の影響は第 X1 年度末に生じるものとするB。設備の更新による現金収支を伴う、 年間の収益と費用の変化は以下のように予想されているA現金収支は各年度末に生 じるものとするB A単位:百万円B 旧機械設備 汎用機械設備 従来の染色加工分 新技術加工分 収益 520 520 60 費用 380 330 40 なお、耐用年数経過後A年後Bの設備処分支出は、旧機械設備と新機械設備ともに 百万円であり、この支出および税金への影響は第 X5 年度末に生じるものとする。 DKJC-2D 6 DKJC2-D-W.smd Page 8 17/10/11 20:46 v3.40 金額欄については次のとおり。 .単位は百万円。 .マイナスの場合には を付すこと。 X1 年度末における差額キャッシュフローの計算 項目 税引前利益の差額 A B 税金支出の差額 A B 税引後利益の差額 A B 非現金支出項目の差額 A B X1 年度末の差額キャッシュフロー A B 各年度の差額キャッシュフロー X1 年度初め A B X1 年度末 A B X2 年度末 A B X3 年度末 A B X4 年度末 A B X5 年度末 A B A設問B この案の採否を検討する際に考慮するべき代表的な指標を安全性と収益性の観点 からつずつ計算し、収益性の観点から採否を決定せよ。資本コストは%であ る。なお、解答にあたっては、以下の複利現価係数を利用し、最終的な解答の単位 における小数点第位を四捨五入すること。 利子率%における複利現価係数 複利現価係数 0.9346 0.8734 0.8163 0.7629 0.7130 DKJC-2D 7 DKJC2-D-W.smd Page 9 17/10/11 20:46 v3.40 第問A配点 28 B A設問B 親会社 D 社単体の事業活動における当年度の損益状況を、30 字以内で説明せ よ。なお、子会社からの配当は考慮しないこと。 A設問B 再来年度に関連会社 D-b 社を子会社化するか否かを検討している。D-b 社を子 会社にすることによる、連結財務諸表の財務指標に対する主要な影響を 30 字以内 で説明せよ。 A設問B 関連会社を子会社化することによって、経営上、どのような影響があるか。財務 指標への影響以外で、あなたが重要であると考えることについて、60 字以内で説 明せよ。 DKJC-2D 8

  

  

  

H28 事例④

D 社は、創業 20 年ほどの資本金 5,000 万円、正規従業員 81 名の、県内産の高級 食材を活かして県内外に店舗を展開するレストランである。 同社は、カジュアルで開放感ある明るい店内で、目の前で調理されるステーキや野 菜などの鉄板焼きを楽しむレストランの号店を開店した。その後、このタイプの鉄 板焼きレストランを県内にさらに店舗開店した。 一方、別のタイプの店舗として、落ち着いた雰囲気の店内で、新鮮な食肉や旬の野 菜を使って熟練した料理人が腕をふるう創作料理店店舗を開店した。鉄板焼きレス トランは、店舗を閉店する一方で、数年前に県外初となる店舗を大都市の都心部に 開店した。前期の第四半期には同じ大都市の都心部に創作料理店を店舗、別の大 都市の都心部に鉄板焼きレストランを店舗開店し、現在の店舗数は合計 店舗であ る。 全般的には依然として顧客の節約志向が強く、業界環境は厳しいなか、主要顧客で ある県外からの観光客数が堅調に推移しており、D 社の県内店舗の来店客数は増加 傾向を維持し、客単価も維持できている。 同社は、顧客満足の提供を追求して、食材にこだわり、きめ細やかな心配りによる ホスピタリティあふれるサービスのために社員教育の徹底に努めている。県外の鉄板 焼きレストランも、県内店舗と同様に店舗運営を徹底したこと、それにより固定客を 獲得できたこと等から、業績は順調に推移している。 大都市に前期に出店した店舗も新規固定客の獲得に努めている。しかし、開店か ら年以上が経過しても、創作料理店は業績不振が続いており、当期は通年で全社業 績に影響が出ているため、その打開が懸案となっている。 県外進出の一方で、D 社は、本社機能の充実に加え、人材育成の拠点となる研修 施設の拡充、新規出店の目的で、用地代を含め約 億円を投じて新しい本社社屋を建 設する計画である。投資資金は、自己資金と借入れによって調達する。調達額とその 内訳は、投資総額が確定した段階で最終的に決定する。 同社は、当期に新社屋の用地として市内の好適地を取得し、建設計画を進めてい る。本社社屋には店舗と研修施設とが併設される。新規店舗は鉄板焼きレストラン と、新しいタイプの店舗として同じ価格帯のメニュー、同格の店舗の雰囲気・意匠を もって顧客に満足感を提供するしゃぶしゃぶ専門店とを開店する予定である。 DKJC-2D 1 DKJC2-D-W.smd Page 3 16/10/18 19:19 v3.20 D 社の前期および当期の財務諸表は以下のとおりである。 貸借対照表 A単位:百万円B 前期 当期 前期 当期 k資産の部l k負債の部l 流動資産 225 259 流動負債 138 465 現金及び預金 164 195 仕入債務 17 20 売上債権 13 14 短期借入金 318 たな卸資産 7 10 一年内返済予定の長期借入金 43 47 その他の流動資産 41 40 一年内償還予定の社債 10 固定資産 371 641 その他の流動負債 68 80 有形固定資産 287 531 固定負債 112 66 建物 267 191 長期借入金 67 20 土地 320 その他の固定負債 45 46 その他の有形固定資産 20 20 負債合計 250 531 無形固定資産 1 2 k純資産の部l 投資その他の資産 83 108 資本金 50 50 資本剰余金 23 23 利益剰余金 273 296 純資産合計 346 369 資産合計 596 900 負債・純資産合計 596 900 DKJC-2D 2 DKJC2-D-W.smd Page 4 16/10/18 19:19 v3.20 前期 当期 売上高 831 940 売上原価 410 483 売上総利益 421 457 販売費及び一般管理費 322 350 営業利益 99 107 営業外収益 3 8 営業外費用 8 20 経常利益 94 95 特別損失 56 税引前当期純利益 94 39 法人税等 27 12 当期純利益 67 27 損益計算書 A単位:百万円B 損益計算書に関する付記事項 A単位:百万円B 前期 当期 減価償却費 28 36 受取利息・配当金 支払利息 1 4 DKJC-2D 3 DKJC2-D-W.smd Page 5 16/10/18 19:19 v3.20 第問A配点 25 B A設問B D 社の前期および当期の財務諸表を用いて経営分析を行い、前期と比較した場 合の D 社の課題を示す財務指標のうち重要と思われるものをつ取り上げ、それ ぞれについて、名称を

a 欄に、当期の財務諸表をもとに計算した財務指標の値を

b 欄に記入せよ。なお、

b 欄の値については、小数点第位を四捨五入し、カッコ内 に単位を明記すること。 A設問B 設問で取り上げた課題が生じた原因を 70 字以内で述べよ。 DKJC-2D 4 DKJC2-D-W.smd Page 6 16/10/18 19:19 v3.20 第問(配点 35 ) D 社は新しい本社社屋の建設計画を進めており、社屋は用地取得の年後には完 成して引き渡しを受ける予定である。以下の設問に答えよ。 (設問) 前期と当期の財務諸表を用い、空欄に金額を記入して当期の営業活動によるキャ ッシュフローに関する下記の表を完成せよ。 (単位:百万円) 税引前当期純利益 39 減価償却費 ( ) 減損損失 56 営業外収益 ( ) 営業外費用 ( ) 売上債権の増減額 ( ) 棚卸資産の増減額 ( ) 仕入債務の増減額 ( ) その他 13 小計 ( ) 利息及び配当金の受取額 利息の支払額 4 法人税等の支払額 35 営業活動によるキャッシュフロー ( ) DKJC-2D 5 DKJC2-D-W.smd Page 7 16/10/18 19:19 v3.20 A設問B 新しい本社社屋を建設するための投資の内訳および減価償却に関する項目は以下 のとおりである。この投資の意思決定は、本社が移転し、新設される店舗が営業 を開始してから年間A当初投資後年目から年目までBのキャッシュフローの予 測をもとに行われている。土地および建物・器具備品の年後の売却価値は簿価と 同額と予測される。 A金額単位:百万円B 投資額 耐用年数 残存価額 減価償却方法 当初投資時点 年後 土地 320 0 安安 建物 0 420 30 0 定額法 器具備品 0 50 10 0定額法 以下の金額を求め、その金額を

a 欄に、計算過程を

b 欄に、それぞれ記入せよ。 なお、

a 欄の金額については、単位を百万円とし、小数点第位を四捨五入するこ と。 土地および建物・器具備品について、投資額、年後の売却価値およびそれ ぞれの当初投資時点における現在価値はいくらか。 新しい本社社屋を建設するための投資の意思決定に際し、新設される店舗 が営業を開始した後の税引後キャッシュフローの増加分はいくら以上と見込ま れているか。ただし、キャッシュフローは、年後から年後まで毎年均等に 生じるものとする。 複利現価係数表A割引率%B 123456 複利現価係数 0.9434 0.8900 0.8396 0.7921 0.7473 0.7050 年金現価係数表A割引率%B 123456 年金現価係数 0.9434 1.8334 2.6730 3.4651 4.2124 4.9173 DKJC-2D 6 DKJC2-D-W.smd Page 8 16/10/18 19:19 v3.20 第問A配点 15 B 大都市の都心部に出店した創作料理店は業績の不振が続いている。そこで、同店を 閉店するかどうかの検討を行うことにした。同店は、商業施設にテナントとして出店 している。同店の見積損益計算書は以下のとおりである。この見積損益計算書をもと に、閉店すべきかどうかについて、意思決定の基準となる尺度の値と計算過程を

a に記入し、結論を理由とともに

b 欄に 50 字以内で述べよ。 売上高 98 変動費 49 限界利益 49 個別固定費* 40 共通固定費配賦額 26 営業利益 17 店舗見積損益計算書 A単位:百万円B 店舗個別の付属設備および器具 備品は償却済みである。 第問A配点 25 B D 社は業者が運営する複数のネット予約システムを利用している。ネット予約シ ステムは、営業時間外でも予約の受付が可能であり、業者の検索サイトに店舗情報が 掲載され、契約によっては広告などでもネット上の露出が増える。初期登録や利用、 予約成約などに関するネット予約システムの料金体系は、業者によってさまざまであ る。 その一方で、店舗側では複数のネット予約システムからの予約と従来どおりの予約 とをあわせ、予約を管理する必要がある。D 社でも、各店舗で予約管理に一定の時 間が費やされている。そこで、同社は業者が運営するネット予約システムに加えて、 店舗別の予約を集中管理する機能も有する自社のネット予約システムを導入すること を検討している。 DKJC-2D 7 DKJC2-D-W.smd Page 9 16/10/18 19:19 v3.20 A設問B 業者が運営するネット予約システムを利用することにより、同システムを利用し ない場合と比較し、D 社の収益や費用はどのような影響を受けているか、60 字以 内で述べよ。 A設問B 自社のネット予約システムA取得原価 20 百万円、耐用年数年、残存価額ゼロB の導入により、予約管理費が各店舗で分のに削減され、予約の成約による送客 手数料の総額が分のに低下することが見込まれる。 自社のネット予約システムを導入する前の短期利益計画は以下のとおりである。 損益分岐点売上高の変動額およびその変動要因について、その金額を

a 欄に、計算 過程を

b 欄に、それぞれ記入せよ。なお、

a 欄の金額は単位を百万円とし、小数点 第位を四捨五入すること。また、②と③はカッコ内に上昇・低下の別を明記する こと。 自社のネット予約システム導入前の損益分岐点売上高はいくらか。 自社のネット予約システム導入による損益分岐点売上高の変動額はいくら か。 導入前の固定費をもとにした、自社のネット予約システム導入にともなう変 動費率の変動による損益分岐点売上高の変動額はいくらか。 売上高 1,120 変動費* 560 限界利益 560 固定費 430 Aうち予約管理費B A12B 経常利益 130 短期利益計画 A自社ネット予約システム導入前B A単位:百万円B 売上高に対する送客手数料の 比率は 1.8 %である。 DKJC-2D 8

   

H27  事例④

D 社は、地方主要都市の郊外に本社および工場を有する 1950 年創業の金属加工業 を営む企業;現在の資本金は億円、従業員 60 <である。同社は、創業時には農業 用器具を製造・販売していたが、需要低迷のため一時期は事業を停止していた。しか し、しばらくして、自動車部品等の製造・販売を主な事業とする X 社への供給を目 的とした、カーエアコン取り付け部品セットやカーエアコン用コンプレッサ関連の精 密部品の製造・販売を開始した。 その後、D 社は X 社以外への精密部品の製造・販売にも事業拡大を図ってきた。 その過程で多様な金属加工技術;板金・切削<を蓄積したことにより、D 社の技術力 は市場から一定の評価を受けている。 現時点における D 社は、X 社向けの部品製造を事業の中核としており、同社から の受注が D 社の売上高全体の割程度を占めている。しかし、最近では、自社開発 z 鋼板を使用した精密部品が主力製品のつになりつつあり、その効果によって X 社向け以外の精密部品の受注が増加傾向にある。さらに、同社が有する金属加工 技術を活かした新規事業として、これまでの取扱製品とは異なる需要動向を示す環境 関連製品の製造・販売を計画しており、すでに一部の製品開発を終了している。な お、当該新規事業分野への進出にあたって慎重な市場調査を行った結果、一定の需要 が存在することが分かっている。 D 社を取り巻く経済環境は回復傾向にあるが、なお先行きの不透明感があること も事実であり、同社の受注状況を見ると、ここ数年間における製品ごとの需要変動や 月次ベースでの生産数量の変動が大きくなっている。また、来期において、主要取引 先の X 社は部品調達の一部を海外企業に求めることを決定しており、そのため、来 期の受注数量が減少すると予想している。このように、同社は環境の不透明性だけで なく、目先の受注減少という状況に直面しており、その経営が不安定になってきてい る。 このような環境下で、経営陣はD社の安定的な成長・発展をどのようにして達成 していくかを日頃より議論している。 1 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 3 15/10/16 18:10 v6.20 以下は、今期;第庵2 < D 社の実績財務諸表と同期における同業他社の実績財 務諸表である。 貸借対照表 ;単位:百万円< <資産の部> <負債の部> 流動資産 600 流動負債 520 現金及び預金 40 仕入債務 260 売上債権 440 短期借入金 240 棚卸資産 110 その他の流動負債 20 その他の流動資産 10 固定負債 360 固定資産 530 長期借入金 300 機械設備 230 負債合計 880 その他の有形固定資産 200 <純資産の部> 140 450 20 620 260 340 650 10 250 110 130 10 380 310 630 有形固定資産 430 600 その他の固定負債 60 資産合計 1,130 1,270 負債・純資産合計 1,130 1,270 同業 他社 D 同業 他社 D 70 投資その他の資産 100 50 資本金 100 利益剰余金 150 240 純資産合計 250 640 400 2 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 4 15/10/16 18:10 v6.20 売上高 2,150 売上原価 1,770 売上総利益 380 当期純利益 30 43 法人税等 12 13 販売費及び一般管理費 320 営業利益 60 営業外収益 13 営業外費用 24 特別損失 7 税引前当期純利益 42 70 410 480 2,320 2,800 56 8 13 7 経常利益 49 64 同業 他社 D 損益計算書 ;単位:百万円< ;<営業外収益はその全額が受取利息であ り、営業外費用はその全額が支払利息で ある。 第問;配点 28 < ;設問< D 社および同業他社の財務諸表を用いて経営分析を行い、同業他社と比較した 場合において、D 社が優れていると判断できる財務指標をつ、課題となる財務 指標をつあげ、 a 欄に名称、 b 欄に算定した数値を、それぞれ記入せよ。なお、 優れている指標については①の欄に、課題となる指標については②、③の欄に、そ れぞれ記入すること。また、数値については、 b 欄のカッコ内に単位を明記し、小 数点第位を四捨五入すること。 ;設問< D 社の財政状態および経営成績について、同業他社と比較した場合の特徴を 60 字以内で述べよ。 3 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 5 15/10/16 18:10 v6.20 第問;配点 34 < ;設問< 以下の損益予測に基づいて、第庵3 期の予測損益計算書を完成させよ。なお、利 益に対する税率は 30 %とし、損失の場合には税金は発生しないものとする。 <損益予測> 第庵3 期の売上高は、X 社からの受注減少によって第庵2 期と比較して 10 %減 少すると見込まれる。また、第庵2 期の損益計算書の費用項目を分析したところ、 売上原価に含まれる固定費は 1,020 百万円、販売費及び一般管理費に含まれる固定 費は 120 百万円である。第庵3 期における固定費と変動費率は第庵2 期と同じであ る。 損益計算書 ;単位:百万円< 売上高 売上原価 売上総利益 当期純損益 法人税等 税引前当期純損益 特別損失 販売費及び一般管理費 営業損益 営業外収益 13 営業外費用 24 0 特別利益 0 経常損益 ;設問< 設問の予測損益計算書から明らかとなる傾向を a 欄に 40 字以内で、そのよう な傾向が生じる原因を b 欄に 60 字以内で述べよ。 4 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 6 15/10/16 18:10 v6.20 ;設問< 設問の予測損益計算書をもとに CVP 分析を行うことによって、以下の金額を 求め、 a 欄にその金額を、 b 欄に計算過程を、それぞれ記入せよ。なお、解答にあ たっては、金額単位を百万円とし、百万円未満を四捨五入すること。 第庵3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために必要となる売上高 はいくらか。 第庵3 期において 100 百万円の経常利益を達成するために固定費の削減を検 討している。必要な固定費削減を行った場合、経常利益がゼロとなる損益分岐 点売上高はいくらか。 第問;配点 26 < X 社からの受注の減少が第庵3 期以降継続し、機械設備 g の遊休化が予想される。 経営陣は、当該機械設備を利用して全社的な収益性を改善したいと考え、以下に示す つのプロジェクトを検討中である。遊休化が予想されている機械設備 g は、取得 原価 50 百万円、年間減価償却費 10 百万円、残存耐用年数年である。なお、以下に おいて、利益に対する税率は 30 %とする。 下記の設問に答えよ。 <プロジェクト Z 受注減少に伴って遊休化する機械設備 g の生産能力を利用して z 鋼板を生産する。 それにより、主力製品のつとなりつつある z 鋼板の生産体制を増強し、さらなる効 率化と安定化および将来的な一貫生産を達成することを目指す。製造・販売予測に基 づく損益等の予測は以下のとおりである。なお、当初投資時点は第庵3 期首であり、 同時点における投資は在庫等に対する純投資額である。 5 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 7 15/10/16 18:10 v6.20 ;単位:百万円< 100 第庵5 費用;現金支出< 売上;現金収入< 当初投資時点 第庵4 100 70 0 第庵3 100 70 0 70 投資額 20 5 <プロジェクト E 遊休化する機械設備 g と新たに購入する機械設備 h を利用することによって、技 術力を活かした環境関連製品の本格生産を目指す。機械設備 h の取得原価は 80 百万 円であり、耐用年数年、残存価額ゼロ、定額法で減価償却する。また、機械設備 h の第庵5 期末時点での価値は簿価と同額の 32 百万円と予測される。製造・販売予測 に基づく損益等の予測は以下のとおりである。なお、当初投資時点は第庵3 期首であ り、同時点における投資は機械設備 h と在庫等に対する純投資額である。 ;単位:百万円< 70 100 第庵3 0 150 250 当初投資時点 第庵4 売上;現金収入< 費用;現金支出< 第庵5 250 投資額 90 20 150 0 ;設問< プロジェクト Z を採用したことによって増加する各期のキャッシュ・フロー; 初投資時点の投資額を含まない<を、以下のつのケースについて計算せよ。 ケース:各期におけるプロジェクト Z 以外の事業活動からの税引前当期純 利益がゼロである。 ケース:各期におけるプロジェクト Z 以外の事業活動からの税引前当期純 損失が 10 百万円である。 6 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 8 15/10/16 18:10 v6.20 ;設問< 両プロジェクトの正味現在価値を計算して a 欄に記入し、採用するべきプロジェ クトについて b 欄に〇印を付けよ。なお、計算においてはかねてより同社が採用し ている資本コスト 10 %を適用し、プロジェクト以外の事業活動からの税引前当期 純利益はゼロであるとする。解答にあたっては、金額単位を百万円とし、小数点第 位を四捨五入すること。 割引率 10 %の現価係数表 0.9091 1 0.8264 2 現価係数 3 0.7513 ;設問< 設問においては正味現在価値によってプロジェクトの収益性を評価したが、D 社の財務状況に鑑みて、プロジェクトの流動性を検討するべきである。適切なプロ ジェクトの評価指標を計算し、両プロジェクトについて比較せよ。 第問;配点 12 < X 社は D 社にとって主要な取引先であり、D 社の受注全体に占める X 社からの 受注割合が大きい。この点に関して、下記の設問に答えよ。 ;設問< X 社のような大口取引先の存在は、D 社にとってメリットもあるがデメリット もある。どのようなデメリットがあるか、30 字以内で述べよ。 ;設問< 設問におけるデメリットを解消するための方策として、環境関連製品の製造・ 販売をすることの意義を 30 字以内で述べよ。 7 DKJC-2D

   

H26 事例④

D 社は創業が 1950 年代で、資本金 2,000 万円、正規従業員 45 名、売上高 10 億円 の、県内に 18 店舗をチェーン展開する老舗喫茶店である。1960 年代に現在の会長が 考案した軽食メニュー、デザート類が人気を博し、現在の多店舗展開の礎を築いた。 同時期にセントラルキッチン方式を導入し、自社工場を保有している。全国チェーン の企業が続々と県内に進出しているが、古くからの顧客を中心に D 社の味を求める ファンは多く、県内での知名度は高い。 店舗の多くは県内の主要な駅前、商店街の物件に出店するスタイルを続けてきた。 これら古くからの店舗のいくつかは店舗面積も狭く、地方都市の中心市街地の衰退に も重なり、客足が落ちてきているのが悩みである。その一方で、近年はオフィス街の テナントや郊外のロードサイド店舗を実験的に開店し、成功を収めている。 しかし、外食産業を取り巻く環境は、原油価格高騰によるエネルギーコストの上昇 や、消費税増税等の影響、少子高齢化による市場規模の縮小やコンビニエンスストア との競争激化による売上高減少のリスクにさらされている。以前、原価低減を目的に コーヒー豆の現地買い付けを試みたものの、為替差損を出したことがあり、ここ数年 は専門の商社から原料を購入しているが、現地買い付けを再開しようと現社長は考え ている。 そのような状況下において、最近、インターネットのブログなどで D 社の軽食メ ニューやデザートのいくつかが地元の B 級グルメとして注目を集めるようになり、 その後メディアで取り上げられる事例が増えてきた。これを好機ととらえ、現社長が 中心となり、工場の一部のラインを利用してお土産として商品化することに成功し た。現在、軽食種、デザート種の商品が人気で、駅の土産物店や、道の駅、高 速道路のパーキングエリア、サービスエリアのお土産物コーナーで取り扱われるよう になり、収益の柱のつとして見込んでいる。しかし、工場の生産能力にも限界があ り、需要に合わせた商品群の整理も必要な時期に来ていると現社長は考えている。 お土産としての商品化は収益の柱として期待されているだけではなく、県外客への D 社の認知度を高め、実際の店舗での飲食につなげたいと考えている。こうした新 しい顧客創出のため、先に述べたロードサイド店舗の拡充や既存店の時代に合わせた 改装など、新しい出店形態を模索している。 1 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 3 14/10/24 14:23 v6.20 D 社および同業他社の平成 25 年度:平成 25 4 1 日~平成 26 3 31 ; 貸借対照表、損益計算書は、以下のとおりである。 貸借対照表 平成 26 年月 31 :単位:千円; 20,000 現金及び 100,000 支払手形・買掛金 80,000 200,000 流動負債 400,000 資産の部 負債の部 1,000,000 建物・構築物 450,000 定資産 900,000 600,000 定資産 1,000,000 100,000 80,000 70,000 150,000 無形固 定資産 30,000 資本金 50,000 純資産の部 250,000 両・工 50,000 100,000 450,000 20,000 資産合 1,200,000 債・純 資産合 1,200,000 資産合 200,000 利益剰余 100,000 その他固定資産 400,000 250,000 50,000 100,000 1,050,000 90,000 120,000 460,000 70,000 80,000 900,000 400,000 80,000 200,000 70,000 30,000 120,000 1,450,000 機械及び装置 100,000 150,000 50,000 940,000 120,000 280,000 480,000 150,000 100,000 100,000 160,000 250,000 510,000 1,450,000 80,000 D 同業他社 D 同業他社 2 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 4 14/10/24 14:23 v6.20 損益計算書 平成 25 年月日~平成 26 年月 31 :単位:千円; 総利益 720,000 売上原価 280,000 売上高 1,000,000 24,000 業外収 4,000 70,000 販売費・一般管理費 650,000 純利益 30,000 20,000 1,500,000 450,000 1,050,000 975,000 75,000 10,000 15,000 28,000 42,000 経常利益 50,000 70,000 D 同業他社 第問:配点 24 ; D 社の貸借対照表、損益計算書と同業他社の貸借対照表、損益計算書を比較して、 D 社が優れていると判断できる財務指標をつ、財務上の課題となる財務指標を つ、名称a とその数値b :単位を明記し、小数点第位を四捨五入すること;を示し、 そこから読み取れる D 社の財政状態および経営成績c についてそれぞれ30 字以内で 述べよ。 なお、優れている指標については①の欄に、課題となる指標については②、③の欄 に、それぞれ記入すること。 3 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 5 14/10/24 14:23 v6.20 第問:配点 30 ; D 社のある店舗の平成 26 年度における予想損益計算書は以下のとおりである。売 上原価は売上高に比例している。設備備品の償却は定額法:取得原価 1,000 万円、残 存価額ゼロ、耐用年数年;で行われており、平成 27 年度期末で償却が終了し、改装 のため取り替える予定である。しかし、この店舗の最寄駅では、平成 27 4 1 の完成に向けて再開発が進んでおり、これに合わせて改装を早める提案がある。 ある店舗の平成 26 年度予想損益計算書 :単位:千円; 42,000 売上原価 10,500 総利益 31,500 販売費・一般管理費 31,000 19,500 賃借料 3,000 他経費 6,500 500 償却費 2,000 改装する場合、再開発イメージに合わせた改装やインターネット環境などの充実の ため、1,500 万円の設備投資額が見込まれている。設備投資は期間年の定額法: 存価額ゼロ;で償却される予定である。改装した場合は、販売費・一般管理費のうち その他経費が、平成 26 年度よりも 10 %増加すると見込まれている。 平成 26 年度期末に改装した場合、駅前の再開発との相乗効果により今後年間の 売上は平成 26 年度よりも 10 %増加すると見込まれている。一方、改装を平成 27 度期末に行う場合、相乗効果が得られないため、平成 27 年度の売上は平成 26 年度よ り%増加し、平成 28 年度以降の年間は平成 26 年度より 10 %の増加が見込まれ ている。 なお、再開発に合わせた改装を行う場合、現在の設備備品は平成 26 年度期末の帳 簿価額で翌年度期首に除却されるものとする。 下記の設問に答えよ。 4 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 6 14/10/24 14:23 v6.20 :設問; 平成 26 年度期末に改装した場合a と、平成 27 年度期末に改装した場合b につい て、それぞれの平成 27 年度の予想税引後キャッシュフローを求めよ。ただし、運 転資本の増減はなく、法人税率は 40 %とする。 :設問; 平成 27 年度から平成 31 年度までの年間における予想税引後キャッシュフロー の正味現在価値を計算し、駅前の再開発完成に合わせて平成 26 年度期末に改装す るか、予定どおり平成 27 年度期末の償却が終わるのを待ち平成 27 年度期末に改装 するかを判断せよ。 ただし、運転資本の増減はなく、法人税率は 40 %、資本コストは%とする: 算には以下に示す現価係数を用いよ; 現価係数表 0.95  0.91 0.86  0.82  0.78 5 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 7 14/10/24 14:23 v6.20 第問:配点 30 ; D 社のセントラルキッチン部門における、人気商品 XYZ のロット単位当たり 原価情報等は以下の資料のとおりである。生産はロット単位で行われている。生産し たものはすべて販売可能であり、期首・期末の仕掛品などはないものとする。 下記の設問に答えよ。 資料 変動費 1,500 5,300 X Z 5,500 1,650 0.5 時間 17,000,000 Y 5,000 1,400 共通固 15,000,000 個別固 18,000,000 直接作業時間 0.4 時間 0.6 時間 17,000,000 :設問; 現状における XYZ それぞれの限界利益率を求めよ:単位を明記し、小数点 第位を四捨五入すること; :設問; 平成 27 年度の需要予測が XYZ の順で、10,0008,0004,000:それぞれロ ット数;と予想されている。平成 27 年度の工場における最大直接作業時間が年間 9,600 時間とした時、営業利益を最大化する XYZ の生産量の構成比と、その 求め方を述べよ。 :設問; 設問の条件に加えて、商品 X Z に販売促進費として、それぞれ50 万円を追 加すると、平成 27 年度の需要は X がさらに 10 %増加、Z 25 %増加するとの予 測に基づく提案がある。この提案を受け入れた場合の最適な XYZ の生産量の 構成比を求めa 、この提案に対する意見を述べよb 6 DKJC-2D DKJC2-D-W.mcd Page 8 14/10/24 14:23 v6.20 第問:配点 16 ; D 社では、再度、コーヒー豆を直接買い付ける可能性を探ることにした。しかし、 以前のような為替差損を計上する恐れがあるため、この為替リスクを軽減する手段の 検討に入った。為替リスクを軽減する手段をつ挙げa 、それぞれの手段を用いた 際、円安になった場合と、円高になった場合の影響:メリット・デメリット;b につい て述べよ。 7 DKJC-2D