4分でわかる「分析型アプローチとプロセス型アプローチ」

これまでの経済戦略論を階層的に分類し、成長戦略と競争戦略についてみてきたが、経営戦略論の考え方には大きく分析型アプローチとプロセス型アプローチがある。
アンゾフ等によって展開されてきた戦略論は、分析型アプローチなどと呼ばれ、ポーターの競争戦略論も基本的にはこの流れを汲むものである。
一方1970年代の後半以降、分析型アプローチの限界が指摘され、プロセス型アプローチ、あるいはリソースベースドビューなどと呼ばれる新たな経営戦略の捉え方が出てきた。

分析型アプローチ

「戦略」という言葉からは、特定の目標を設定して、それを実現するための方策を事前に計画することを連想しがちである。
1960年代以降に展開されてきた経営戦略論(例えばアンゾフやポーターの戦略論や(PPM)などといったもの) は、まさにこの点を強調する戦略論であり分析型アプローチと呼ばれる。
これらは企業の戦略行動を「計画段階」と「実行段階」の2つに分けて捉える。
「計画段階」では様々な要因を詳細に分析検討した上で戦略計画が策定される。
「実行段階」ではその計画を実現するために具体的な行動を起こす。
つまり両者の関係は計画段階が実行段階を規定するという意味において一方的である。

こうした分析型アプローチに基づいて1970年代の米国企業を中心に戦略経営戦略計画システムなどと呼ばれる公式化された組織的な経営戦略の策定手法が採用されていった。

分析型アプローチの限界

分析型アプローチは経済環境が安定した状況では機能的だが、現在のように不確実性の高い状況においては計画通りに物事が進むことは稀であり、そもそも計画段階で完璧な分析を行うことは困難である。
そのため、分析麻痺症候群と呼ばれる現象が見られるようになり、分析型のアプローチは次第に機能しにくくなってきた。

※分析麻痺症候群とは以下のような状況を指す。
①御社の経営企画スタッフだけで緻密な分析を行って戦略計画を立案しても、それが現場と遊離したものである場合、本社の経営企画スタッフと現場の事業部門との間に相互不満が生まれてしまい計画が実行に移されない現象。
②緻密な分析により定量化しやすい(評価がしやすい)ことが好まれ、リスクの高い実験的な試みを回避してしまう現象。

分析とは本来合理性を追求するものであり保守的になる傾向がある。
よって、評価の基準さえはっきりしないような新しい製品や先行きの知れない新規事業に取り組むよりは、すでに評価の確立している製品や事業の改良、拡張といった確実性が高く、手っ取り早いことが選択されるようになる。そしてそのことが企業の環境変化への適応力を喪失させるのである。

プロセス型アプローチ

分析型アプローチの限界に対応する形で、1970年代末以降に展開されたのがプロセス型アプローチである。
プロセス型アプローチでは戦略的意思決定をトップマネジメントや本社の経営企画スタッフだけでなく、組織全体から生み出されるものとし、経営戦略を企業と環境の相互作用や企業内のダイナミックな変化から生じる「パターン」として考える。
つまり経営戦略とは「個別企業のこれまでの歴史的産物(プロセスの産物)」であり「行動の中から戦略が生み出される」というものである。

プロセス型アプローチでは、最終目的であるビジョンを明確に示すとともに実際の事業活動で生じる予期せぬ事象を撹乱要因ではなく、当然に生じうる学習の機会として、より積極的に捉え、ビジョンに至るプロセスを常に見直し変更修正をする。
そのためにはそれぞれの企業が明確な組織文化を構築し、情報交換や知識の累積(組織学習)を頻繁に行い、容易に価値観の共有を測れる柔軟な組織になっていなければならない。
つまり当初、意図していなかった偶発的な事象に対しても事後的に対応することで「戦略」として取り組んでいくのである(このことを特に創発戦略と呼ぶことがある)

リソースベースドビュー

プロセス型アプローチは、競争優位の源泉となる内部資源(特に情報的経済資源)の形成のプロセスに着目した考え方である。
これと同様に内部資源に着目した考え方としてリソースベースドビューがある。

リソースベースドビュー

リソースベースドビューとは、外部環境に注目するポジショニングアプローチに対し内部資源に注目する競争戦略論の考え方であり知的資源(情報的資源と言った見えざる資産)などの企業内部に蓄積された経営資源を競争優位の源泉とするものである。
コアコンピタンス論はこの立場によるものである。

ケイパビリティ

ケイパビリティとは、リソースベーストビューで着目する経営資源の一種であり企業の競争力創造力の源泉として基盤となる能力のことであるが、現在では組織知、つまり「知を創る」組織的な能力または蓄積された知識組織文化などを指す場合が多い。

※分析型アプローチとプロセス型アプローチ、またはポジショニングアプローチとリソースベースドビューはそう反するものではなく、相互補完の関係にあると考えるのが妥当である。