4分でわかる「競争優位の戦略」

競争優位の戦略とは、競争相手に対して優位性を築くための戦略パターンのことである。
ポーターは競争戦略の3つの基本形として「差別化戦略」「コストリーダーシップ戦略」「集中戦略」をあげている。
さらに、これから戦略を実現するためには個々の企業活動を整合化していく必要があるとし、そのためのフレームワークとして「価値連鎖(バリューチェーン)」を提起している。
また、競争戦略論に関連して「競争地位別戦略」、「速度の経済性」、「先発優位性と後発優位性」を取り上げている。

3つの基本戦略


ポーター基本戦略の優位性戦略ターゲットを軸に、競争の3つの基本戦略を示している。
※集中戦略にはコスト集中と差別化集中がある。

差別化戦略

差別化戦略とは自社の製品に買手にとって魅力的な独自性を打ち出すことによって、競争企業に対する優位性を価格以外の点で築く戦略である。
代表的な差別化の方法は以下の通りである。

①製品そのものに関するもの
品質、性能、デザイン、色彩、梱包などについて差別化する。
②製品サービスに関するもの
アフターサービス、代金の支払条件、店舗数などについて差別化する。
③消費者の認知度を高めるもの
広告宣伝による製品の社会的認知度の向上、企業イメージの向上について差別化する。

 

コストリーダーシップ戦略(低コスト戦略)

コストリーダーシップ戦略とは同種の製品を競争企業よりも低いコストで生産する戦略である。
大量生産によって低コスト製品を提供することにより、シェアを高め規模の経済性や経験曲線効果を得ることにより一層の低コストを実現していく(あくまで低コストであり、必ずしも低価格帯で販売するわけではない)。

集中戦略

差別化戦略やコストリーダーシップ戦略が、広い市場をターゲットとするのに対して、集中戦略は市場を細分化し、自社の能力にマッチした一部のセグメントに焦点を当てる。
そしてその市場において差別化の面もしくはコストの面で優位に立とうとする戦略である。

価格競争戦略の持つリスク

・差別化戦略
競合企業の模倣による「差別化」された特徴の優位性が喪失するリスクがある。
・コストリーダーシップ戦略
競合企業がこの戦略を模倣すると利益を度外視した価格競争が行われるリスクがある。
・集中戦略
ターゲットセグメントが狭いため経営資源を豊富に有する競争業者との差異が失われた場合に大幅に皺を失うリスクがある。

価値連鎖(バリューチェーン)

業界構造分析を行い、低コスト化によって高い収益性を確保するためには、個々の企業活動を整合化していく必要がある。
価値連鎖とはそのためのフレームワークであり、事業活動を機能ごとに分解し、どの部分(機能)で価値(差別化や低コスト化)が生み出されるのか、どの部分に強み弱みがあるのかを分析するものである。
そして競争優位の源泉を定め、企業全体として顧客に価値を提供できるように活動を連結させていくためのものである。

企業の価値連鎖は主活動支援活動からなる。
主活動は製品やサービスをお客に提供することに直接的に関与する活動である。
具体的には、出荷、物流、販売、マーケティング、サービスなどがある。
支援活動は製品やサービスを提供する活動には直接関与しないものの、主活動を遂行していくためには不可欠になる活動である。
具体的には、全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動などがある。
こうした一連の活動の結果としてマージン(利ざや)が生み出される。
価値連鎖の中の一部分の活動だけが低コスト化、差別化を実現していても、それだけでは有効性は高くない。
企業全体の活動が相互に連結され、はじめてその価値を顧客まで届けることができるからである。
逆に全体として連結された上で提供された価値であるならば、競合他社は一部分だけでなく全体を模倣しなくてはならないため、競争優位の持続性を高めることができる。
企業が複数事業を展開している場合には単一事業内での活動の連結にとどまらず事業間の活動の連結も考慮する。

価値システム

一般的に価値がエンドユーザーに届くまでには原材料の供給、製造、物流、販売と言った一連の流れを経る。
各事業者ごとに価値連鎖が存在することを踏まえると、川上から川下に至る一連の流れは、「各事業者の価値連鎖」の連鎖という大きな活動群(価値システム)ということになる。
つまり、売手が供給する価値(具体的には製品という形態をとる)は買手の価値システムに組み込まれることになる。
例えば、鉄鋼メーカーが提供する価値は、その顧客である自動車メーカーの「製造」、並びに「調達活動」に大きな影響を与え、その結果製造された自動車はディーラーの価値活動に大きな影響を与える。

よって、自社の競争優位は買手サイドの価値連鎖において、自社および自社製品が果たす役割の大きさに依存することになり、価値システムを分析し、それに自社の価値連鎖を適合させることが必要になる。
価値システムの分析の結果、自社にとってそれが有利であれば垂直的統合や水平的統合を洗濯することもある。

競争地位別戦略

企業の業界における競争地位は、市場占有率に基づき、リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーの4類型に分類される。
以下の図はそれぞれの位置づけにある企業が取るべき基本戦略を示している。

 

類型 特徴 経済資源の質と量 市場目標 市場ターゲット 基本方針・基本政策
リーダー 業界内で最大の市場シェアを誇る企業 質:高

量:大

・最大市場シェア

・最大利潤

・最大の名声、イメージ

・No.1の地位の維持

フルカバレッジ(すべての顧客を対象) ・製品:フルライン化

・価格:非価格対応

・チャネル:開放的

・プロモーション:全体訴求

チャレンジャー リーダーに果敢に挑戦し市場シェアの拡大を狙う企業 質:低

量:大

・市場シェアの拡大

・リーダーの地位の奪取

セミフルカバレッジ ・リーダーとの差別化

・リーダーが取りたくてもイメージやメッセージのために取れないような差別化

フォロワー リーダーに挑戦せず現状を維持しあえて危険を冒さない企業 質:低

量:小

市場に生存するための利潤を得る 経済性セグメント(中〜低価格志向) ・リーダーに追随

・低価格化

ニッチャー 採算性のためにリーダーが扱わない分野もしくは気がついていない分野に資源を集中させる企業 質:高

量:小

特定市場における利潤、名声、イメージ 特定市場セグメント ・集中化

・ミニリーダー政策(特定市場におけるリーダーの政策定石)

なお、リーダー企業の戦略定石として次の4つをあげる場合もある(一部上記と重複する)

周辺需要拡大政策

「周辺需要拡大」とは、要は市場そのもののパイを拡大することである。
例えば、朝・夜だけ歯を磨く人が多かったとすれば、「毎食後、歯を磨こう」というキャンペーンにより歯磨き粉の消費量を1.5倍に増やすといった具合である。
周辺需要が拡大すれば、最大の市場シェアを有するリーダー企業が最も恩恵を受けることができる。

同質化政策

一般的にリーダー企業は、チャレンジャー企業がとってきた差別化戦略に対して、相対的に優位な経営資源によって、それらを模倣・追随し、その差別化を無効にしてしまう「同質化政策」をとる。

非価格対応

業界が低価格競争に巻き込まれると、最も利益が減少するのは市場シェアが最も大きいリーダー企業であるため、「非価格対応」がリーダー企業の戦略の定石である。

最適シェアの維持

市場シェアを取りすぎると独占禁止法に抵触する。
また、ある程度の水準を超えると、さらなる市場シェアの獲得には多大なコストがかかるようになり、かえって利益率が落ちることがある。
よって「最適シェア」の維持というのがリーダー企業の戦略定石となる。

速度の経済性・先発優位性と後発優位性

速度の経済性

競争優位性の源泉には、規模の経済性や範囲の経済性、ブランドなどの独自経営資源、経験曲線効果など様々なものが考えられるが「速さ」もその1つである。
速度の経済性とは、スピードを上げることによって得られる経済的便益の総称である。
情報獲得のスピード、仕事のスピード、商品開発スピード、商品回転スピードなどを上げることで、有効性や効率性を高めることができる。
こうしたスピード(時間)に焦点を当てた競争のことをタイムベース競争という。
スピードを上げることによりもたらされるメリットの例としては次のようなものがある。

速度の経済性によるメリット
・他社より早く製品を市場投入することで先行者優位を獲得できる。
・スピードの速さそのものが競争優位の源泉となり利益率が向上する。
・在庫回転率など投資効果が高まり投資利益率が向上する。
・ 生産から販売までのリードタイムが短縮され売れ残りの質や機会損失が減少する。

先発の優位性と後発の優位性

先発の優位性
競争相手よりもいち早く市場に参入することで超過利潤を手にすることができる場合が多い。
先発の優位性の内容としては次のようなものがある(速度の経済性の「先行者優位」の内容)。

・消費者の心の中に「参入障壁」を形成できる(強力なブランド連想を構築できる)
・(早期に)経験曲線効果を実現できる。
・利用者の生の声をいち早く得られる。
・価格に無頓着なイノベーター層を取り込める。
・最も有利な市場ポジションを先取りできる。
・製品の規格(例:デファクトスタンダード)を決定しやすい。
・製品の切り替えコスト(スイッチングコスト)の発生を利用できる(顧客はわざわざ慣れ親しんだ自社製品から他社製品へスイッチすることを躊躇する)。
・希少資源(優秀な人材、希少天然資源、有利な立地など)を先取りできる。

後発の優位性

一般的には先発が有利とされる一方で、後発の方がリスクを回避できることから有利になる場合もある。
後発の優位性の内容としては次のようなものがある。

・需要の不確実性を見極めることができる。
・プロモーションコストを節約できる。
・模倣による研究開発コストを節約できる。
・顧客の変化に対応しやすい。
・技術面の不確実性に対応できる。