2分でわかる「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」

PPM(Product Portfolio Management)はボストンコンサルティンググループ(BCG)によって開発された戦略策定支援ツールであり、企業が多角化により複数の事業を展開する時の総合効果を分析し、各事業への資源配分を決定するときに利用されるものである。
またPPMに関する概念であるSBU、製品ライフサイクル、キャッシュフロー、経験曲線効果についてもみていく。

PPMの前提

 

SBU(Strategic Business Unit :戦略事業単位)


SBUとは特定の事業を中心として構成される戦略策定のための単位である。
個々のSBUは、1つあるいは複数の事業部で構成され、各SBUは独自の目標を持ち、戦略と計画の策定を行う。

 

製品ライフサイクル(Product Life Cycle)


製品ライフサイクル(PLC)とは製品が市場に投入され、廃棄されるまでの生命周期といえる。
製品によって製品ライフサイクルの長さには差があるが、その間における売上及び利益の変化は一般的に以下の図のような動きを表す。
それぞれの局面について売上と利益の関係(=資金の流出入の観点)を切り口に説明する。


▼各段階の内容▼


導入期


新製品が開発され始めて市場に投入された時期である。

1  売上、費用、利益
導入当初は当然ながら売上高は低い状態である。
また新製品紹介などのための広告宣伝費や営業活動のための費用が多くなるため、利益はマイナスとなる。

2  製品のコストと価格
生産量がまだ少ないため大量生産のメリットを生かすことができず製品のコストは高くなる。そのため販売価格も高い状態が続く。

3 顧客
新製品に関心の高い革新的な顧客であるが、その数はまだ少数である。

4 競合企業と市場の大きさ
新製品の開発段階である場合が多く、競合製品により市場に参入してくる企業の数はまだ少ない。従って市場の大きさも小さい状態である。

 

成長期


製品が消費者に認知され、市場に浸透してくる時期である。

1  売上、費用、利益
成長期の当初は売上高はまだ低いが、時間の経過とともに需要が急激に増し、売上高が急上昇していく。
また、競争に勝つため、多くの広告宣伝費や営業費が必要となるが利益は売上高の上昇に連れてプラスに転じ、徐々に高くなっていく。

2  製品のコストと価格
製品の市場への浸透とともに生産量の拡大と作業の熟練などによりコストが低下していく。また、競争企業との価格競争なども発生するため製品価格もコストの低下ともに低くなっていく。

3  顧客
比較的早期に新製品を購入したい層が顧客となり、その数も増加していく。

4 競合企業と市場の大きさ
競合企業により同種の製品が開発され、多くの競合企業が市場に参入してくる。
また需要の拡大とともに市場の規模も急成長し大きなものとなる。

 

成熟期


製品がある程度市場に浸透し需要が一段落する時期である。

1  売上、費用、利益
急上昇してきた売上高の伸びが止まり、高い状態のまま推移する。
広告宣伝費もそれほど多くは必要ではなくなる。
従って利益が最大となる局面を迎える(なお、利益が最大化するのは成長期とする場合もある)。

2  製品のコストと価格
大量生産と熟練などによりコストが低いレベルで推理するとともに価格は下げ止まりの状態になる。

3  顧客
新製品の購入に保守的な層が顧客となりその数は安定的に推移する。

4  競合企業と市場の大きさ
市場での競争に敗れた企業が撤退するため競合企業の数は減少する。
また市場の規模は大きい状態であれば横ばいとなる。

 

衰退期


商品の魅力が薄れ、需要が減少していく時期である。

1  売上、費用、利益
売上高は減少するが固定費は必要であるため利益も減少していく。

2  製品のコストと価格
コスト、製品価格ともに低い状態である。

3  顧客
低価格志向の顧客が中心となり、全体としては減少する。

4  競合企業と市場の大きさ
撤退する企業はさらに増加する。また市場の規模も小さくなっていく。
※もっとも全ての製品がこのような製品ライフサイクルを取るわけではない。
成長期を迎えることなく市場から姿を消す製品は多いし、ロングセラーによって衰退期になかなか移行しないものもある。また製品が現在、製品ライフサイクルのどの段階にあるかを把握することは困難である。
つまり事後的にしか判断できないという指摘もある。

 

(補足)製品ライフサイクルのコンセプト
製品ライフサイクルは「製品そのもの」や「ブランド」といった具合に捉えるレベルごとで異なる。例えばガソリン自動車(製品そのものの)のライフサイクルとトヨタ・カローラ(ブランド)のライフサイクルといった具合である。
通常は「商品そのもの」のライフサイクルの方が期間は長くなる。

 

PPMとの関係

PPMでは、市場成長率という概念を使用するが、製品ライフサイクルと市場成長率の関係は次のようになる。

1  導入期は、市場の成長率はまだ低い状態である。
2  成長期は、市場の成長率が高い状態である。
3  成熟期、衰退期は市場の成長率は鈍化し横ばいとなっている。

キャッシュフローと経験曲線

キャッシュフロー
キャッシュフローとは企業内部への資金の流入額から企業外部への資金の流出額を差し引いた額のことである。
資金流入額は企業会計で算定された利益を元に計算される。
また、資金流出額は企業が行った研究開発、設備投資、運転資金などから計算される。
従って会計上の利益がプラスであっても資金流出額がそれを上回ってる場合にはキャッシュフローがマイナスとなる。
PLCの導入期や成長期には研究開発や設備投資が重点的に行われるため、キャッシュフローがマイナスになることに注意する。

経験曲線効果
経験曲線効果とは製品の累積生産量が増加するに従い、製品1単位当たりの生産コストが一定の割合で減少するという生産量とコストの関係を表す経験則である。
この効果は経験を重ねることによる作業者の熟練(学習効果)、生産工程や生産設備の改善などによるものが考えられる。

PPMとの関係
PPMでは市場占有率(市場でのシェア)という概念を使用するが、キャッシュフロー、経験曲線と市場占有率との関係は次のようになる。

市場占有率が高いほど累積生産量が多い

経験曲線効果が大きい

生産コストが低い

資金流出が少ない

キャッシュフローが増加する

 

PPMの理論

PPMの概要

PPMでは既に述べた市場成長率を縦軸に相対的市場占有率(相対的市場シェア)を横軸にとった以下の図のようなチャートを作成し事業のバランスを視覚的に捉えていく。

このチャート上の各カテゴリーに企業の保有するSBUを当てはめて分析を行う。

縦軸の市場成長率が高いということはPLC上の成長期に位置し、市場成長率が低いということは成熟期、衰退期に位置していることを表している。

また、横軸の相対的市場占有率が高いということは同業他社との相対的な比較において、多くの売上を獲得していることを表している。

 

各カテゴリーの内容

問題児

相対的市場占有率 低い
資金流入 少ない
市場成長率 高い
PLC 成長期(初期)
資金流出 多い

1  資金流出が多く資金流入が少ないためキャッシュフローがマイナスである。
2  問題児に投資を行うことによって競合企業からシェアを奪い、相対的市場占有率を高めることにより資金流入は増加し問題児は花形に移行する。
3  全ての問題児が花形に育つわけではなく、その選別が重要になる。

花形

相対的市場占有率 高い
資金流入 多い
市場成長率 高い
PLC 成長期(中後期)
資金流出 多い

1   資金流入も資金流出も多くキャッシュフローの源ではない。
2   成熟期になって市場占有率が低くなると金のなる木に移行するため、花形に投資を続行し、相対的市場占有率を高く保つ努力をする必要がある。
3   問題児から花形に移行する場合と、研究開発により直接花形を作り出す場合がある

金のなる木

相対的市場占有率 高い
資金流入 多い
市場成長率 低い
PLC 成熟期
資金流出 少ない

1  資金流入が多く、資金流出が少ないことからキャッシュフローの源となる。
2  ここで獲得できるキャッシュフローを花形や問題児、さらに研究開発部門へ投資する。
3   市場成長率が停滞しているため、積極的な追加投資は行わない。

負け犬

相対的市場占有率 低い
資金流入 少ない
市場成長率 低い
PLC 衰退期
資金流出 少ない

1   資金流入、資金流出ともに少ない。
2   原則的にはすでに投資した経営資源を回収して撤退し、他の事業での有効活用を図る。
3   売上規模が小さくなるが、資金流出が少ないため高収益(利益率が高い)事業になる可能性はある。

各カテゴリーに配置されたSBUの定石

問題児 育成・撤退
花形 維持・拡大
金のなる木 維持
負け犬 撤退・売却・縮小

※ただし事業を続けることで残存者利益を獲得できる場合もある。

 

PPM上のSBUの働きと理想のPPM

1  資金の流れ
資金源である「金のなる木」から得られた資金で「問題児」の市場占有率を上げたり「花形」の市場占有率を維持したりする。

2  望ましい移動の方向
「問題児」から「花形」へ「花形」から「金のなる木」へに移っていく。
「金のなる木」から「負け犬」にならないように市場占有率の維持を図る。

3  理想のPPM
資金源である「金のなる木」をいくつか保有した上で将来の資金源になる「花形」と、将来的に「花形」になるべき「問題児」がバランスよく配置されているPPMが望ましい。

PPMの問題点
・企業の経営資源を財務資源という観点からしか考えていない。
・各SBU間のシナジーといった質的な面での評価が軽視されやすい。
・PPMは既に展開したSBUの分析であり、新しい事業分野への展開の手がかりにはなりにくい。
・負け犬に配置されたSBUではモラールが低下する可能性がある。
・金のなる木への投資が行われないため、その衰退が早まってしまう恐れがある。