4分でわかる「経営戦略の構成要素」

ホファー&シェンデルによれば、経営戦略とは企業がその経営目的を達成する方法を示すような、現在および予定した資源展開と環境との相互作用の基本的パターンである。
そして経営戦略の構成要素(戦略構築の際に考慮する要素)として以下の4つをあげている。

 

ドメイン(事業領域)

ドメインとは事業領域のことであり現在から未来に渡って企業の事業がいかにあるべきかを明示した企業の生存領域である。

ドメイン設定の意義

1 企業の意思決定者たちの注意の焦点が定まる(その結果、事業展開の発案のベースが提供される)。

2 どのような経営資源の蓄積が必要かについての指針となる。

3 企業全体を一つの組織とする一体感を作る。

ドメインの設定に際しては自社の経営資源を考えて、どのような領域で強みを発揮できるかという点と自社の将来のあるべき姿を考えて今後、必要な経営資源を蓄積していくにはどのような領域で活動する必要があるかについて検討すべきである。

ドメイン設定の範囲

ドメインの設定が狭すぎたり広すぎたりすると次のような事態が発生する。

1 ドメインの設定が狭すぎる場合
・顧客ニーズに適合しにくくなる

2 ドメインの設定が広すぎる場合
・経営資源が分散してしまう
・無意味な競争に巻き込まれる

ドメインの定義と影響

ドメインの定義には物理的定義と機能的定義がある。

1 物理的定義
『モノ』を中心にドメインを発想する。
※映画会社が自社の事業領域を「映画の製作と定義する」というようなことがその例である。
物理的定義のデメリットとして事業活動の展開範囲が狭くなり現在の事業を領域を超える発想が出にくいという点が挙げられる。 

2 機能的定義
物理的定義がものを中心に発送したのに対し機能的定義は『コト』『顧客のニーズ』を中心に発想することを意味する。
※映画会社が自社の事業領域をエンターテイメントと定義するというようなことがその例である。
機能的定義のメリットは事業における将来の発展可能性を感じさせるという点である。
しかしその一方でドメインが抽象的になり過ぎてターゲットとなる顧客や事業(製品)の性格が不明確になりやすいというリスクもある。

企業ドメインと事業ドメイン

複数事業を展開する企業においては、ドメインの定義は企業全体としての事業領域である企業ドメインと事業ごとの展開領域である事業ドメインの2つのレベルで行われることになる。

1 企業ドメイン
企業ドメインを指定するということは展開していく事業の範囲、あるいは組み合わせ(事業ポートフォリオ)を規定することであり、企業としてのアイデンティティ(同一性、基本的性格)を規定していくことでもある。

2 事業ドメイン
事業ドメインを規定するということは、その事業の範囲を規定するということであり具体的にはどのような消費者をターゲットにし、どのようなニーズを満たしていくのかといったことを規定するということである。
事業ドメインを考える際に有用なツールとしてエーベル( A bell.D.F)の三次元枠組みがある。
これによるとエーベルはドメインを考える際には、どんな顧客(customer)に対してどんな機能(function)をどんな技術(technology)によって提供していくのかと言った具合に3つの次元を元に設定していくことを提唱している。

ドメインの変化とドメインコンセンサス

企業のドメインを狭く規定すると、選択する未来の方向が狭く限定されてしまうためドメインは環境変化に合わせて変化させる必要がある。
またドメインの変更は組織の内部のみならず組織外部との合意(コンセンサス)を得ることが望まれる。

資源展開

一般的に経営資源とはヒト、モノ、カネ、情報を指す。

資源展開とは経営目的を達成するためにコレラの資源を配分していくことである。

競争優位性

競争優位性とは企業が領域決定と資源展開パターンを通じて競争者に対して築く独自性である。

コアコンピタンス


コアコンピタンスとは経営資源を組み合わせて企業の独自性を生み出す組織能力のことであり、企業の持続的な競争優位性の源泉を表すものである。
コアコンピタンスは長期にわたる継続的な改善や強化を経て構築されるものであり以下の3つの要件がある。

1 様々な市場へアクセスする可能性を生み出すこと。
(様々な市場や製品の展開に活用できる)

2 最終製品が特定の顧客の利益に重要な貢献をすること。
(単に技術レベルが高いと言ったことではなく顧客にとって価値を生み出すことができる)

3 競合他社が模範することが困難であること。
(競合他社が真似をするのが困難である)


模倣困難性

持続的な競争優位性の要件としては模倣困難であることが挙げられる。
すなわち競合企業にとって自社の強みがわかりにくく、容易に模倣できないことが競争優位性を維持するためには必要になる。

特に企業が有するノウハウや専門的なスキルといった情報的経済資源は凡用的な設備や単なるIT武装といった物的な経営資源と比較して模倣困難性が高く持続的な競争優位性の資源になりやすい。

VRIO分析

VRIO分析とは以下の4つの点から自社の経営資源を分析する手法である。

1 資源の価値
その資源・能力があれば事業機会を逃さず脅威にうまく対応できるのか。

2 資源の希少性
競争相手のうち何社がその価値のある資源・能力をすでに保有しているのか。

3 資源の模倣困難性
その資源を持っていない企業がその資源を獲得・開発しようとするとコスト面で不利が生じるのか。
また模倣困難性の規定要因は以下の4つがある。

・独自の歴史的条件
経営資源がその企業独自の歴史によって形成されているのかどうか。
またこれに関連して形成されるにあたって過去の出来事や発展経路に依存している程度を経路依存性と言う。

因果関係の不明性
競争優位の形成要因が不明である程度のこと。

社会的複雑性
非物理的で社会的な要因によるものかどうか。

特許
的財産として確立されているかどうか。

組織


資源・能力の潜在力を十分に引き出し活用するように企業は組織されているか。

上記を要約すると保有している経済資源に価値があっても希少でなければ他社と同等にしかなり得ない。
希少であれば少なくとも優位性は得られるが、模倣が容易であればその優位性は一時的なものとなる。
模倣が困難であれば基本的にはその優位性は持続する。
ただし、これらは全て資源をうまく活用する組織がなければ根本から崩れる。

よって4つの条件をすべて満たす経営資源は持続的な競争優位性の源泉となる可能性が高い。

 

シナジー

シナジーとは相乗効果ともいい、同一企業が複数の事業活動を行うことによって異なる企業が個別に行うよりも大きな成果が得られることである。
例えば、鉄道会社が小売業やレジャー施設を運用すると言ったようにAを運用することがBに良い結果をもたらしBを運用することがAに良い効果をもたらすといったことである。

相乗効果(シナジー)と相補効果

相補効果とは互いに足りない部分を補うことで市場における需要変動や資源制約に対応することができ、より大きな効果が得られるものである。
相乗効果との違いを判断するポイントは、例えばA と B という事業があった場合に、AとBの間に直接的な相互作用があるか否かという点である。
相乗効果は A と B という組み合わせだからこそ得られる効果であり(直接的な相互作用がある)
相補効果は Aと B でも得られる効果がAとCでも同じように得られるような効果である(直接的な相互作用がない)

範囲の経済性

範囲の経済性とはシナジーと似た概念であり企業が複数の事業活動を行うことにより、それぞれの事業を独立して行なっている時よりもより経済的な事業運営が可能になるという(シナジーは複数事業の組み合わせによって効果が大きくなるということであり必ずしも経済的になるということを含んだ概念ではない)。
後述する規模の経済は同じものを数多く作って固定費を分散させることを意味するのに対し、範囲の経済は多様な種類のものを作ることによって固定費を分散させることを意味するのである。
範囲の経済の源泉には販売チャネルや設備などの有形資源の他にブランドや知識、ノウハウなどの無形資源があるが近年では特に後者を見えざる情報的経済資源として重要視するようになっている。

固定費と変動費

生産にかかる費用は大きく固定費と変動費に分けられる。
固定費とは生産費用のうち、土地代や設備代などのように生産数量の変化に関係なく一定額を要する費用のことであり例えば5000万円の設備代は製品を一個作ろうが1000個作ろうが等しくかかる費用である。
変動費とは生産費用のうち生産数量の変化とともに増減する費用のことで 原材料費などが相当する。
例えば一個作るのに材料費が1万円かかる場合、基本的には1000個作るのに材料費は1000
万円かかる。